ガチバカ!第五話

TBS系ドラマ「ガチバカ!」。楠野一郎脚本。Arca音楽。主題歌(終曲)倉木麻衣ベスト オブ ヒーロー」&(序曲)AAA「ハレルヤ」。貴島誠一郎チーフプロデューサー。橋本孝プロデューサー。ドリマックス・テレビジョン&TBS制作。竹村謙太郎演出。高橋克典主演。第五話。
近代の制度としての「学校」とは監獄に他ならないが、そこから脱走した先に帰る場所はあるのだろうか?ない!というのが「女王の教室」における阿久津真矢の厳粛な宣告だったが、この「ガチバカ!」世界はもっと陽気だ。中村雅志(斎藤慶太)にとってのアジール(避難所)は三人の友、井上耕太(増田貴久)・深田裕之(石田卓也)・御木本健児(橋爪遼)と一緒にバカ話をして過ごす一時に相違ない。しかるに彼らの通う柿の木坂高等学校は、所謂IT長者である彼の父からの莫大な寄付金によって野球部を強引に強化し甲子園出場を果たしつつあり、その故に彼は常に優遇される立場にある。他校生徒の暴力で負傷した耕太の仇を討つため三人で喧嘩を売りに行ったあとにも、深田と御木本が謹慎処分を申し付けられたのに反して彼のみは処分を免れてしまった。雅志にとっては三人の友との連帯こそが唯一、心の支えであるのに、「学校」と「家庭」はともにその連帯を断ち切ろうとしたのだ。ここにおいて彼が爆発し、爆弾騒動までも惹き起こすに至ったのは、一見どんなに唐突で過激でも少年の内面の問題としては決して不自然ではないとも思う。とはいえ「ガチバカ!」世界に深刻な悲劇は似合わない。爆弾で校舎は壊滅か?と思わせてその実は屋上に花火を上げただけだったのだ。
耕太の恋はどうなるのだろうか。彼は森本加奈(黒川智花)に片想い。でも加奈はもともとは宇津木実(手越祐也)と両思い。両名は今は互いに距離を置いているとはいえ心の中では今なお両思いであるに相違ないことを、耕太は感じている。それでもなお彼は友たちに励まされ、加奈に語りかけようとしている。そして加奈はそれに応えてくれている。しかもそれは、宇津木実の見るところ耕太の誠意と勇気を受け止めるからこそのことなのだ。それにしてもあの御好み焼き店の場面、加奈と宇津木実との間に火花の散るのを感じて挫けそうになりながらも何とか場を和やかに保とうとして、黙々と御好み焼を切り分けていた耕太の健気な姿。空腹だったからというのもあるだろうが、多分あの微妙な空気にあっては食い物にでも逃げるほかなかったのだ。