二人の中田三郎

昨年の夏のテレヴィドラマ「がんばっていきまっしょい」DVD-BOX(六枚組)初回限定版が本日Amazon.co.jpより届いた。早速その第一巻と第二巻を早送りしつつ流し見た。中田三郎の役者交代の問題がどう処理されたかを確認しておきたかったのだが、どうやら予告通り、放送時の作品をそのまま収録してあるようだ。従って第一話と第二話では内博貴が中田三郎を演じ、第四話からは田口淳之介が演じているが、狭間の第三話では名のみ出てきて姿は見えない。放送時のまま。潔い。これで正解だと思う。一個の作品としての統一性は損なわれたとはいえ、連続ドラマならではの一種「ライヴ感」のようなものが熱く記録されたわけで却って興味深い。何より二種類の中田三郎像を味わえるのは楽しい。また一方から他方への交代は丁度、劇中の役割の変化に呼応するかのようでもあり、その意味では成功しているとさえ云えるかもしれない。中田三郎は学園の王子様として颯爽と舞台に入場したあと、主人公たちの青春ドラマをあたかも高みから見物するかのような位置に君臨するが、やがては自ら王座から降りて青春ドラマの渦中に身を投じてゆく。云わば王子様でしかいられない中田三郎を内博貴が演じ、王子様を辞めることにした中田三郎を田口淳之介が演じたような格好になっていると思う。もっともそうであれば中田三郎にはやはりセッキーへの片想いを密かに抱いていて欲しかった。ビーチフラッグ大会で直接対決する直前のセッキーの熱さに一目惚れして、以後その愛を内面に深めていったことにしておけば、曇りなく光り輝く少年の闇の情熱を強烈に描き得て、あのドラマ世界はもっと狂おしいまでの深みをも生んだに相違ないのに。そこが実に惜しかった。

がんばっていきまっしょい DVD-BOX