喰いタンKUI-TAN

日本テレビ土曜ドラマ喰いタンKUI-TAN」。寺沢大介原作。伴一彦脚本。小西康陽音楽。主題歌=B'z「結晶」。次屋尚&山本由緒プロデューサー。和田豊彦&井下倫子協力プロデューサー。アベクカンパニー制作協力。位部将人演出。東山紀之主演。第七話「学校給食を食いまくる!」。
今宵の戦闘場面は凄かった。その舞台は夜の学校の体育館。食いしん坊の探偵KUI-TANこと高野聖也(東山紀之)が宝石強盗団二人組を相手に見事なアクションを披露。鉄パイプを手にした二人の敵を相手に、初めは金色の箸を両手に持って二刀流で戦ったが、またしても勢い余って箸を跳び箱の中に落としてしまい、早くも危機に陥ったところで迅速に近くにあった棒を掴み、孫悟空の如意棒のように振り回して二人組を撃破。金田一少年=かねだはじめ少年(須賀健太)も卓球の球等で援護射撃に努め、野田涼介(森田剛)と五十嵐修稔刑事(佐野史郎)が現場に駆け付けたときには既に犯人二人とも捕縛されていたのだ。
喰いタンの鮮やかな戦闘が後半を彩った一番の見所だとすれば前半を飾った見所は野田涼介と金田一少年による夜の学校の探索にあった。大人の涼介は小学生の少年よりも夜の闇を怖がっていた。
今宵の第七話にはパロディ風の要素が満ちていて一々面白かった。喰いタンの見事な如意棒アクションが月九ドラマ「西遊記」を意識したものであるのは見易い。今宵これを見て、孫悟空役にはヒガシが相応しかったのか!と驚嘆した視聴者は少なくなかったことだろう。なお、「勿体ないオバケ」は往年の公共広告機構か何かのテレヴィCM。「学校の怪談」は学校を舞台にした怪談のこと一般を表示する語と云えなくもないが、一九九〇年代に公開された平山秀幸監督・金子修介監督の映画全四作の名称でもある。そもそも金田一少年の存在自体が名前に関しては「金田一少年の事件簿」、容姿に関しては「名探偵コナン」で、二重の意味でパロディなのだが、このことは劇中でも既に基本設定の一部になっている。これまでは主に野田涼介が「きんだいち」呼ばわりをして、「じっちゃんの名にかけて」の台詞まで口にしていたが、今宵の話で判明したのは、どうやら少年は学校の同級生たちの間でも「きんだいち」と呼ばれていたらしいことだ。そして喰いタンのパロディをして日々楽しんでいたらしい金田一少年に対して、彼らは「喰いタンの名にかけて」謎を解明しろ!とまで迫ったのだ。もう一つ傑作だったのは金田一少年の「汚名返上!名誉挽回!」の台詞。混同して間違え易い二語に他ならない。
ところで、父兄と冴子教諭(北川弘美)との論争には考えさせられた。なるほど「好き嫌い」の問題には少々難しい面がある。アレルギーと混同されてしまいがちだからだ。嫌いなものはない方がよいに決まっているが、アレルギーはどうにもならない。他方、好き嫌いによる栄養バランスの不備をサプリメントだけで解消するのが適切ではないのはボディビル科学の説くところだ。栄養摂取は薬品の類によるべきではなく、自然な料理によるべきなのだ。何より学校給食を「金払っているのだから食堂も同然」と主張するとは言語道断。給食は食の教育、食育であるはずだ。だから学校に菜園を作り食材への愛や感謝を知らせるのはよい方法だが、皆の前で旺盛にありがたく「いただく」姿をみせる喰いタンのやり方も悪くないと思う。もちろん出水京子(市川実日子)のように料理の仕方を工夫するのは基本中の基本。だが、無論それは学校給食の領域ではなく家庭の食育の領域であり、かの「好き嫌い」論議で教諭側を批判した父兄連中は実は己の無策無能を露呈した上で開き直ってみせただけなのだ。