たったひとつの恋第五話

日本テレビ系。土曜ドラマたったひとつの恋」。第五話。
脚本:北川悦吏子。音楽:池頼広。主題歌:KAT-TUN「僕らの街で」[作詞&作曲:小田和正]。制作協力:三城。プロデューサー:西憲彦&渡邉浩仁。演出:岩本仁志
この物語の主題とされる身分の差という問題に関し、今宵の第五話には二つの出来事が描かれたが、何れも何とも救いのない出来事ではあった。
一つはユウコ(戸田恵梨香)がコウ(田中聖)を避けた話。ありがちな話ではあるが、このドラマ世界におけるこの出来事は、ナオ(綾瀬はるか)とユウコとの差を表示するものと見ることができそうだ。ナオが圧倒的な大富豪の令娘であることを横濱女学院の学生たちの誰もが知っているが、ユウコの家庭については恐らくは誰も知らない。ユウコは多分、大して富豪でもないが、富豪の令娘たちの集う名門女子大学に混じって生きている。云わば己の身分を隠して、偽っている。同じ学校の学生たちと一緒にいる場にコウが現れることは、ユウコが名門女子大学に混じった異分子であることを暴き出してしまう事態にも繋がりかねない。少なくともユウコはそう恐れたのだろうと推察され得る。だからナオにとって無問題でしかないことがユウコにとっては大問題にもなってしまう。明るくて元気で前向きなユウコの唯一の弱点がそこにあるとさえ云えるのかもしれない。
もう一つは山下(波岡一喜)一味がヒロトの友人と騙りナオから金を奪い取ろうとした話。ナオや兄の月丘達也(要潤)にとっては予想も理解もできなかったような事件であり、それはそのまま、大富豪にとっての貧乏人の理解し難さ、異質性を物語るものであるだろう。生まれ育ちのよい者には到底理解できないような暴力性が、生まれ育ちのよくない連中には備わっているのだということを明らかにした事件なのだ。しかし厄介なことに、劇中の大富豪はそのような形で納得するかもしれないが、視聴者にはそれが難しい。劇中の大富豪の心理や論理を想像し解することはできるかもしれないが、山下一味の暴力性を単に貧乏人の性質としてのみ理解するわけにはゆかないことも弁えているからだ。貧乏人が全て乱暴な悪人であるわけではないし、高貴な家柄の連中の中にも乱暴者がいることは松平定知の例から明白だろう。
[登場人物&出演者]ヒロト=神崎弘人20歳(亀梨和也KAT-TUN])/ナオ=月丘菜緒20歳(綾瀬はるか)/コウ=草野甲20歳(田中聖KAT-TUN])/アユタ=大沢亜裕太20歳(平岡祐太)/ユウコ=本宮裕子20歳(戸田恵梨香)//神崎造船鉄工所修理工(田口浩正)同造船鉄工所修理工(浜田晃)同造船鉄工所経理(大島蓉子)レン=神崎廉10歳(斎藤隆成)//月丘達也25歳(要潤)//「元カノ」ユキ(高橋真唯)山下(波岡一喜)//月丘みつこ48歳(田中好子[特別出演])/月丘雅彦55歳(財津和夫)/神崎亜紀子48歳(余貴美子)。