大河ドラマ風林火山第三話

NHK大河ドラマ風林火山」。原作:井上靖。脚本:大森寿美男。音楽:千住明。主演:内野聖陽。演出:清水一彦。第三回「摩利支天の妻」。
ミツ(貫地谷しほり)が、床に散らかった飯を食っていたのが泣かせた。自らの腹に宿した愛する山本勘助内野聖陽)の子を無事に産み育てるためにはどんな極貧の生活の中でも食ってゆかなければならなかったわけだが、小さな農村に生きる若い娘の逞しさ、その内面の愛情の強さが心を打つ。農村に何時までも燻るつもりのあるはずもなかった勘助が農作業に精出し始めたのも肯ける。しかし福島越前守テリー伊藤)の使者として武田信虎仲代達矢)を訪ねた山本貞久(光石研)の帰り行く姿を見て駿河に戦のあるだろうことを察知したことで胸中に秘めていた野心を再燃させた勘助は、山城の模型を楽しそうに拵えていた。その姿は微笑ましかったが、同時にそれは勘助が一人の女を幸福にする生活に甘んじることのできるような男ではないことをも雄弁に物語っていた。このドラマは実に戦国の人間をよく描いている。