大河ドラマ風林火山第四話

NHK大河ドラマ風林火山」。原作:井上靖。脚本:大森寿美男。音楽:千住明。主演:内野聖陽。演出:清水一彦。第四回「復讐の鬼」。
次週いよいよ今川家の大乱。今週はその爆発へ向けて力を蓄積することに費やされたとも云えるが、それなのに凄みがあって見応えがあった。人物の描写の密度の高さが迫力を生み出すのだろうか。山本勘助内野聖陽)は、亡くなったミツ(貫地谷しほり)への深い愛を胸中の深みに秘めて淡々と理と利を説いたが、板垣信方千葉真一)に対して彼が斬りかかったのは、復讐の衝動にかられた暴挙に見せかけた猟官運動か?と見せかけて、その奥にはやはり怒りが燃えていたのが明白だ。その意味において武田晴信市川亀治郎)の洞察力は鋭かった。奇妙な浪人の山本勘助は、激しい情熱を鎮めることなく燃やし続けながらも同時にそれを上回る知恵を働かせることもできるに相違ない。若殿はそう見たのだ。しかし若殿は浪人がそのような人物であることを見抜いた上で敢えて浪人にそのような人間であるべきことを説教したのだ。山本勘助に対し己を知らせるのを意図したのか、むしろ板垣信方に対し語り聞かせたかったのか。勘助との初対面における武田晴信の言動は幾つもの意図を束ねた複雑なものだったと想像されるが、それを博覧強記の若者ならではの嫌味に満ちた難解な言語で表現してして、しかもそれを晴れやかな明るい表情で発してみせたのだから捻くれている。山本勘助が怒ったのは無理もないが、そう気付くとき武田信虎仲代達矢)の気持ちも理解できるような気がしてしまう。
さて、今週の最後には寿桂尼藤村志保)の子の禅僧、梅岳承芳、のちの今川義元谷原章介)が登場。武勇にも知略にも風雅にも秀でた源氏の貴人の風格を漂わせていた。次週からの活躍に期待しなければならない。