ハケンの品格第七話

日本テレビ系。水曜ドラマ「ハケンの品格」。第七話。
脚本:中園ミホ。音楽:菅野祐悟。主題歌:中島美嘉「見えない星」(作詞作曲:長瀬弘樹&編曲:羽毛田丈史ソニー・ミュージック アソシエイテッドレコーズ)。プロデューサー:櫨山裕子&内山雅博。演出:佐藤東弥。制作協力:オフィスクレッシェンド
食品会社S&Fの営業部長、桐島敏郎(松方弘樹)。今まで温厚な上司と見えていた彼は、今回、唐突に豹変したのだろうか?否、断じてそうではない。見落としてはならない。テレヴィドラマを視聴する者は、多かれ少なかれ主人公の側に立ってしまいがちだ。そして派遣社員の一員としての大前春子(篠原涼子)に肩入れして見る限り、確かに桐島部長は常に部下を守ってくれる優しい上司だった。だが、ここで注意すべき点が二つある。(一)大前春子が異常に高度な能力を備えた「スーパー派遣」であり、極めて特殊な立場にあること。(二)営業部販売二課主任の東海林武(大泉洋)をはじめとする正社員たちと悉く衝突する大前春子を守るということは、換言すれば、正社員たちには厳しく冷たく対処するということでもあること。以上の二点を総合して導出される真相は何か?云うまでもない。自身の真の部下である正社員にさえも冷たい部局の長が、真の意味では己の部下ではない派遣社員に対して温かいはずがないではないか!ということだ。加えて想定しておくべき点は、派遣社員の企画を会社の事業として採用した場合、それを誰がどのように実行し、会社はそれをどのように評価するのか定かではないという問題だ。指揮権と責任と功労の所在が不明なのだ。問題を解決するためには当該派遣社員を正社員に迎えるしかないだろうが、大勢の正社員を解雇して派遣社員で代替する暴挙を断行した程の会社に、そんなことができるわけがない。むしろ派遣社員よりも劣った企画力しか持ち合わせない正社員集団に対し、会社がこれまで以上に過酷な態度で臨んでくる恐れも出てこよう。さらに、よい企画を出した派遣社員に対する嫉妬から正社員がその企画を妨害する恐れもあるという点も含めて考えるなら、桐島部長が新人派遣社員の森美雪(加藤あい)の名を企画者として出すことを却下したのは当然だったと云わざるを得ない。それは組織の中で有能であると認められた幹部社員というものの本性的な判断であり、そこに組織の本性が表れているとも云えるだろう。組織というものは実利と儀礼との両面を兼ね備えるものだからだ。