渡る世間は鬼ばかり最終話

TBS系。「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。作:橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。プロデューサー:石井ふく子。演出:山崎恆成。第八部第五十回=最終回二時間スペシャル。
小島家ラーメン店「幸楽」において小島家の長女、田口愛(吉村涼)と誠(村田雄浩)の間に長女さくらが生まれたのを記念して挙行された祝宴の席に、慌しく、しかし嬉しそうに入ってきた小島久子(沢田雅美)。聞けばアメリカで療養中の小島キミ(赤木春恵)の世話をしていた小島加奈(上戸彩)が帰国したとのこと。その報に接して、それまで賑やかだった場内は急に無表情に静まり返った。このドラマには稀な、ドラマティクな場面だった。
しかるにそのあとに来たのは驚異の事実の連続。第一に、加奈と小島登(伊藤淳史)、そしてキミは、日本に単身帰国した久子がアメリカの彼等に仕送りしている多額の金が「幸楽」小島家の儲けを不当に横取りして得たものであることを知っていて、それによって大いに助けられてきたことについては感謝しつつも心苦しくも思っていて、そして今はそれを無用と感じていると云う。第二に、加奈はアメリカ人のIT長者と結婚することを決めていて、登もその人の会社に職を得て、今や能力給で多額の収入を得るに至っているので、両名とも今後もアメリカでキミの世話を見てゆくつもりであり、今さら日本に帰国するつもりはないと云う。久子がケータリング騒動を繰り広げていた間、これだけの変化が生じていたのだ。そして加奈と登とキミを日本に呼び戻して一緒に生活したいと考えていた久子とは逆に、加奈は久子をアメリカに呼び戻そうと考えていた。しかし久子はそれを拒否した。どんなに富裕であろうともアメリカで生きたくはなかったからだった。換言すれば、加奈と登とキミは物語から永遠に退場したということだろうか。
退場したのは加奈と登とキミだけではなかった。娘たちに捨てられて勤労の意欲を喪失した久子が自室に引き籠り、会社を山下健治(岸田敏志)に委ねて放棄してしまおうとしたとき、健治は逆に喜んで会社を売却しようとした。ところが、売却先が山下光子(奥貫薫)の属する会社であることを知って、久子は激怒した。健治を解雇して追放した。これに伴い、健治と光子も「渡る世間は鬼ばかり」物語からは永遠に退場ということだろう。
他方、退場を余儀なくされるかに見えて免れたのは、大原葉子(野村真美)との離婚を免れた大原透(徳重聡)。追い出されるか、生き残るか、様々なリストラの断行された最終回二時間スペシャルだったと云えるだろう。