大河ドラマ風林火山第二十六話

NHK大河ドラマ風林火山」。原作:井上靖。脚本:大森寿美男。音楽:千住明。主演:内野聖陽。演出:福井充広。第二十六回「苦い勝利」。
武田晴信市川亀治郎)の突然の凶暴化に接して怯え戸惑っていた山本勘助内野聖陽)と真田幸隆佐々木蔵之介)と相木市兵衛(近藤芳正)が、苦い勝利のあと会話していた場面は、淡々冷静な言葉の中にも、あたかも互いの傷付いた心を慰め合うかのような雰囲気があって味わい深かった。
しかし恐怖政治が永続的ではあり得ないのは、ハーバート・ハートの主権概念論を持ち出すまでもなく、歴史の証明するところであるだろう。実際、忠臣の板垣信方千葉真一)と甘利虎泰竜雷太)は主君の豹変を武田家の危機と認識した。事態の激変を喜んで受け容れているのはそもそも忠誠心なんか持ち合わせてもいない小山田信有(田辺誠一)だけだったろう。
それにしても今年のこの大河ドラマでは、目を背けたくなるような残虐な非道な事象をも、公共放送としての節度を保ちながら、さり気なくもギリギリの形で描写していて、歴史ドラマ制作者としてのその姿勢には、心情的な賛否を別にすれば(私的には拒否したいものの)一応、感心せざるを得ない。