太陽と海の教室第四話

フジテレビ系。月九ドラマ「太陽と海の教室」。
脚本:坂元裕二。音楽:服部隆之。主題歌:UZ(織田裕二)「君の瞳に恋してる」。プロデュース:村瀬健。制作:フジテレビドラマ制作センター。演出:谷村政樹。第四話。
湘南学館3年1組の生徒の一人、三崎雅行(中村優一[D-BOYS])は一橋大学商学部の入学試験にも合格できる程の優等生でありながら、同時に東京藝術大学音楽学部のピアノ科をも狙える程のピアノ奏者でもある。ゆえに理事長の神谷龍之介(小日向文世)は、一般の大学への進学に秀でた湘南学館の名声をさらに芸術方面にも轟かせるべく、何としても彼を藝術大学へ合格させたいと考え、期待していた。理事長のこの野心を煽っていたのは、理事長の側近衆の一員である音楽教師の赤木保則(池田鉄洋)だった。しかし肝心の三崎雅行は、彼等の期待の大きさを知って責任の重さを感じ、耐えられなくなり、また、今や受験という狭い目標だけのためにピアノを弾くことを苦痛にさえ思うに至り、逃げ出したい気分にさえなっていた。
彼のこの逃避、逃走への願望が、云わば飛び火したような恰好で、根岸洋貴(岡田将生)と白崎凜久(北乃きい)との間の幼時からの恋心をめぐる騒動をも惹起したわけなのだが、さて、気になるのは、(一)三崎雅行はピアノ音楽に対する愛と夢と、大学受験とを、結局、どのように調和させ得たのか?ということ、そして(二)彼の、音楽への愛とも何等か密接な結び付きがあると思しい公然の交際相手、貴林優奈(黒瀬真奈美)との関係はどのように修復され得たのか?(或いは修復され得なかったのか?)ということだろう。だが、その辺のところは殆ど描かれなかったと云うに等しい。なぜならこの青春学園ドラマの主人公は、教師役の櫻井朔太郎(織田裕二)を別にすれば、生徒役の中では、根岸洋貴と白崎凜久の二人に他ならないからだ。彼等二人の近くには何時も田幡八朗(濱田岳)と屋嶋灯里(吉高由里子)と日垣茂市(鍵本輝[Lead])がいて、そして榎戸若葉(北川景子)の近くには川辺英二(山本裕典)がいて、このドラマの日常風景が作られる。三崎雅行は偶々彼等の輪に入り込んだおかげで吾等テレヴィ視聴者の視野にも入り得たが、そこから離れるやテレヴィ画面からは再び見えなくなってしまう。このドラマはそのような作り方を採っているのだ。
とはいえ甚だ惜しいのは、三崎雅行の進学をめぐり、音楽教師の赤木保則と理事長との間に生じた意見の対立がそのあと全く描かれなかったことだ。普段は理事長の忠実な犬のようにしか見えない人物にも、実は、教育に対する独自の信念や情熱があり、それは必ずしも理事長の考えと一致するものではないという(特筆に価するが、当たり前でもある)事実関係はそれ自体、物語の展開を左右し得る重要な要素ではないかとも思われるが、果たして今後にその影響を見ることができるのだろうか。
なお、今宵のこの話には「崖の上のショパン」という(現今話題の、変な主題歌のある映画の題名のパロディみたいな)変な題が付けられていて、実際、三崎雅行は崖の上に置かれたピアノでショパンの曲を弾くわけなのだが、あの場面は実は、三崎雅行と川辺英二が劇中で初めて同一画面に収まった場面だったのではないだろうか。ちなみに、今さら云うまでもないことだが、中村優一は「仮面ライダー電王」で牛若丸風の仮面ライダーゼロノス=桜井侑斗、山本裕典は「仮面ライダーカブト」で貴族の裔の仮面ライダーサソード=神代剣を演じていた。