スクラップ・ティーチャー第三話

日本テレビ系。土曜ドラマ「スクラップ・ティーチャー 教師再生」。
脚本:佐藤久美子。音楽:吉川慶&Audio Highs。主題歌:Hey!Say!JUMP「真夜中のシャドーボーイ」。プロデューサー:櫨山裕子&内山雅博。制作協力:オフィスクレッシェンド。演出:茂山佳則。第三話。
今宵のは先週までの二話よりも一段と面白かった。制作者側も、設定を完了して調子が出てきたのだろうか。
杉虎之助(上地雄輔)と久坂秀三郎(中島裕翔)との間の信頼関係は何時もながら温かみがあって見ていて楽しいが、今回は滝ゆう子(加藤あい)も加えた三人組での活動も楽しかった。学校裏サイトに教師や生徒の個人情報を無数に書き込んでいる「A組の大魔王」の正体を突き止めるべく捜査をしていたとき、滝先生は久坂秀三郎を「はじめちゃん!」と呼んで「金田一少年の事件簿」の七瀬美雪の気分を味わっていた。
ちなみにテレヴィドラマ「金田一少年の事件簿」制作者は櫨山裕子オフィスクレッシェンド。このドラマと同じ。
久坂秀三郎は杉虎之助先生をどこまでも信頼しているが、それは実は、杉虎之助の情熱を愛するからであると同時に、「先生」というものを信頼したいからでもあったようだ。そして彼が「先生」というものを信頼したいのは、先生たちが皆それぞれに、たとえ頼りない面や悪い面もあるにしても、よい面もあることを忘れないからだった。教師の一寸した説教にも、子どもたちに対する激励を見出すことができる。そして彼は「人は変われる」と信じている。「今が駄目だからと云って、この先も駄目だと決め付けるの?」という彼の言は、周囲に対する彼の見方であると同時に、それ以上に、彼自身の指針、目標でもあるのだろう。彼は、自分自身、今よりも未来が少しでもよくなるよう頑張りたいと考えていて、ゆえに周囲にも、今よりも未来が少しでもよくなる可能性があることを信じているのだ。この信念を表明するとき、彼の涼しげな目元は何時もよりも力がこもっているのを感じさせた。
学校裏サイトの「A組の大魔王」の正体は美術教諭の四方田昭彦(内田紳一郎)だったわけだが、校内の荒廃の中で鬱屈のゆえに暴走した彼を立ち直らせることができたのが、高杉東一(山田涼介)率いるセレブ転校生三人衆の厳しい言葉攻めでもなければ杉虎之助先生の誠実な詰問でもなく、結局は学校裏サイトへの久坂秀三郎の、先生に対する擁護と感謝と激励の書き込みに他ならなかったことは意味深い。信頼されなければ人は真には生きてゆけないことをよく物語っていよう。
久坂秀三郎と高杉東一は「先生」に対する考え方の相違から対立することが多いし、久坂秀三郎が信頼し続けている杉虎之助先生に対しても高杉東一は冷たい態度を取り続けているが、両陣営の何れとも親しくなってしまったのが滝ゆう子先生。滝先生の両陣営にまたがる活躍によって事件が鮮やかな解決を見るだけではなく、滝先生の眼を通して高杉東一率いるセレブ三人衆の素顔の意外な愛らしさを知ることもできる。
高杉東一がウィーン少年合唱団に憧れている!という意外な事実は滝先生によって暴かれた。滝先生は三人衆に捜査への協力を依頼するにあたり、高杉にはウィーン少年合唱団のレコードを、吉田栄太郎(知念侑李)には有機農薬を作る仕事を手伝う約束を、入江杉蔵(有岡大貴)には圧力鍋を贈って云わば買収したわけだが、農作業の手伝いは兎も角、レコードや圧力鍋であれば、彼等自身の財力で簡単に入手できそうなものではある。この辺の展開の途方もない間抜けさ加減こそがこのドラマの持ち味であると思う。
吉田栄太郎と入江杉蔵は女子にモテモテなのに、高杉東一は女子には全く人気なく、電車ヲタクの変な男子一人にだけ熱烈に大人気!という予想外の新展開は、今後も何らかの展開を見るのだろうか。学校内の女子にも男子にも特には人気があるわけでもなく一部の不良男子からは鬱陶しがられて苛められてさえいるのが久坂秀三郎だが、大人の視聴者の眼には彼こそが真に理想の少年と映る。だが、もちろん優等生にも生活はある。学校外での彼の少年男子としての日常を少しは見せて欲しい気もする。