任侠ヘルパー第八話

フジテレビ系。木曜劇場任侠ヘルパー」。第八話。
脚本:古家和尚。演出:西谷弘。
翼彦一(草なぎ剛)等の働いている介護施設「タイヨウ」に、彼等の所属の隼会の宿敵、鷲津組の組長、鷲津莞爾(竜雷太)が入所してきた。この厄介な展開は、彦一等を「研修」と称して「タイヨウ」で働かせている隼会若頭の鷹山源助(松平健)にとっては、計画通りの事態だったか否かは兎も角、少なくとも予想できた状態ではあったようだ。尤もなことではある。背中に刺青を入れたような物騒な老人を引き受ける奇特な介護施設が、「タイヨウ」以外にあるはずもない。任侠ヘルパーを幾人も抱え込んでしまえる「タイヨウ」以外に。しかもこの介護施設は、選りにも選って鷲津組の「縄張り」の只中に位置しているのだ。やはりこれは鷹山の仕掛けた罠である可能性が高い。
とはいえ今宵の見所は対立よりも共鳴にある。鷲津組長の同室者が病院へ運ばれたときの、その人の家族がその人の延命処置を医師に依頼したことに対する鷲津組長の怒りと、それを止めた彦一が実は同じ怒りを抱いていたところの静けさと強さに満ちた遣り取りには、静けさのゆえにますます際立つ迫力があった。この種の見所を一々挙げてゆけば際限がない。
一つ見逃せないのは、あの不敵なヘルパーの和泉零次(山本裕典)が、鷹山源助組長の側近だったということ。なるほど確かに彼は、第一話の時点でも既に、隼会の組員の黒沢五郎(五十嵐隼士)等を軽く圧倒する程の腕力をさり気なく発揮していたし、今宵の第八話でも、鷲津組長の迫力に怯えていた黒沢五郎を跳ね除けて鷲津組長の両手を捕まえてみせる手際のよさを見せた。鷲津組長が己の刺青を皆に見せようとしたときに至っては、それを瞬時に隠すための作戦で、彦一と和泉零次との奇跡の連繋までも実現した。とてもカタギのヘルパーとは思えない彼の鮮やかな手際には、彦一も只ならぬものを感じないわけにはゆかなかった程だ。
人と人との感情の交流や交錯にしても、派手な戦闘、アクションにしても、今宵の話には所謂「初めからクライマックス」と形容したくなる興奮度の高い盛り上がりが、最初から最後まで、幾重にも積み重ねられていた。
ところで。この「初めからクライマックス」という語が二〇〇七年度「仮面ライダー電王」に由来することは云うまでもないが、二〇〇八年二月発行の内山勝利責任編集『哲学の歴史1 哲学誕生 古代1 始まりとしてのギリシア』(中央公論新社創業120周年記念出版)の帯にも「最初からクライマックス!」と書かれてあって、なかなかの流行語だったことが窺える。しかし、なるほど古代ギリシアから始まる西洋哲学史こそは「最初からクライマックス」の典型例だと云える。