素直になれなくて第四話

フジテレビ系。ドラマ「素直になれなくて」第四話。
美青年リンダ(玉山鉄二)が勤務している雑誌社「ベストマガジン社」の編集部の会議室に、彼の大事な友であり密かな片想いの相手でもあるに相違ない青年ナカジ(瑛太)が仕事のため訪れていたところを、少し前までリンダにセクハラを仕掛けていた淫乱な上司である北川悦吏子ならぬマリコ(渡辺えり)は目撃し、大いに関心を抱いた様子だった。ナカジの若い肉体に心惹かれたのか?無論それもあるだろうが、それだけではないのは明白だった。ナカジに心惹かれていること、新たな標的と見定めつつあることをリンダ相手に表明することによってマリコは、リンダを慌てさせ、リンダに対して再度の肉体関係を迫りたかったのだ。
マリコのこの陰謀が成り立つための前提は、単純に考えるなら、(一)リンダとナカジとの間に深い友情があり、それを失うことをリンダは恐れているということだ。友情を壊されたくないならば再度の肉体関係を試みよ!とリンダに迫ることがマリコの意図であり、云わば脅迫に他ならない。
これに関連して、マリコが淫乱なセクハラ上司に他ならぬことをナカジに思い知らせれば、ナカジは、リンダもまたマリコの餌食になっていただろうことを知ることになるだろうことも想定しておきたい。リンダが実はマリコの性欲の餌食であることを、ナカジがどのように見るかは定かではないが、少なくともリンダは、ナカジからそのような者として見られることを望まないはずだ。だから、マリコの正体が淫乱なセクハラ上司であることをナカジに知られたくないなら再度の肉体関係に応じるがよい!とリンダを脅迫することをも、マリコは意図していたと考えることができるのだ。
だが、(二)ナカジを誘惑してみせる意のあることを表明することによってリンダに嫉妬の感情を芽生えさせることができるとマリコは思い込んでいた…というのも、あり得ない話ではない。もちろんリンダがそんなことで嫉妬するはずはないが(嫉妬があり得るのは、ナカジに対してではなく、ナカジの身体に触れ得るマリコに対してだ)、傲慢な権力者マリコがそのように過剰な自信を抱いていた可能性を否定できるわけではない。
しかるに、それとは逆の、もっと恐ろしくおぞましい事態を想定してみることも必要だろうか。(三)リンダが同性のナカジに心惹かれているだろうことを敏感に察したマリコが、ナカジを誘惑する意のあるところをリンダ相手に表明すれば、愛するナカジの肉体を汚されたくないはずのリンダは、身を挺してナカジを守るべく、自ら志願してマリコの性欲を受け止めるだろうことを、マリコが想定していた可能性だ。だが、これは最も恐ろしくおぞましい状況であると云わざるを得ない。なぜならこのように仮定した場合、マリコは、リンダがナカジのような同性の肉体にしか反応できないだろうことに気付いた上で、それでもなお敢えてそんなリンダに肉体関係を迫っていることになるのだからだ。こうなるともはやセクハラをも超えている。