ヤンキー君とメガネちゃん第五話

TBS系。金曜ドラマ「ヤンキー君とメガネちゃん」第五話。
品川大地（成宮寛貴）の母の品川聖（堀ちえみ）が、若かった頃には航空機の客室乗務員（当時の語に云う「スチュワーデス」！）として働いていたことを明かした。「ドジでノロマな」とか形容されていたのだろうか。
今回の話の核をなしたのは地味な工藤拓也（田村健太郎）と華やかな橘サオリ（夏目鈴）との忍恋で、品川大地や足立花（仲里依紗）はその恋を何とか実らせようとして無謀なまでに大掛かりなイヴェントを企画してしまうわけだが、ここでも品川大地と足立花は正反対であることによって似たもの同士にもなっていたのが面白い。
工藤拓也と橘サオリの恋に鋭く気付いたのは、恋らしい恋の経験こそないものの、高校受験のとき一度だけ遭遇した謎の少女への片想いを今なお抱き続けている品川大地。しかし両名の忍恋の事実を知るや、その成就に向けて熱心に動き出したのは、同じく恋の経験がないどころか、そもそも恋という語の意味さえも知らなかった足立花。だから、工藤拓也と橘サオリの恋を成就させるための大作戦には今一つ乗り気ではなかったはずの品川大地が、結局は最も強く情熱的に工藤拓也に語りかけて想い人への告白を促さずにはいられなかったのは、己自身の、愛を告白したかった相手に告白するための唯一の機会を逃してしまった悔しい想いを、重ね合わせずにはいないからに他ならなかった。
品川大地は、恋の経験こそなくとも恋心だけは既に知ってはいるが、他方、足立花は恋心という状態の存在を今ようやく知り初めようとしている段階に過ぎない。だが、品川大地が己の片想いの相手の顔も確とは憶えても覚えてもいないし名も知らないのに対し、足立花は己の心に生じた変化の正体が恋であること、恋心の対象が品川大地であるかもしれないことを未だ自覚できてはいない。決定的に違うが、何となく似て見える。
千葉星矢（小柳友）が品川大地の微かな恋心の存在に気付いているのに対し、姫路凛風（川口春奈）は足立花の恋心の芽生えに殆ど気付いてはいないところも、上手いこと「対」をなしていると云えるだろう。
同級生の女子たちの間で「キモイ」とか「ヲタク」とか見られているらしい松山啓介（中村倫也）と柳川徹（間宮祥太朗）の二人組。それでも彼等はどういうわけか生徒会長=足立花主催の大イヴェントでは当たり前のように司会の大役を任されていた。このイヴェントの一番の山場を作った工藤拓也と橘サオリの恋の成就のあと、この幸福な二人を囲んで皆で記念撮影を行う際、松山啓介と柳川徹の両名は工藤拓也と橘サオリの両名を挟んで立って、なぜか松山啓介と工藤拓也が付き合い始めたかのような記念写真になってしまっていた。なるほど、確かに、何をやりたいのか解らない「キモイ」二人であるかもしれない。