旅行記五鉄斎美術館器玩展

旅行記五。
出張先に滞在したままの休日の朝。十時までは起きることを得なかった。眠かったが、何とか起きて漸く十二時にホテルを外出。地下鉄で京都駅から四条駅を経て阪急電車烏丸駅へ行き、そこから十三駅を経て一時半頃に宝塚の清荒神駅へ到着。普段にも増して大勢の参拝客で賑わう蓬莱山の参道を登る途上、大正八年創業の老舗「宝光亭」で昼食。
二時五分頃に山門に到着し、本堂に参拝したのち、その奥にある聖光殿の鉄斎美術館へ行き、三月二十七日まで開催中の新春企画展「鉄斎の器玩-名工と遊ぶ」を観照。
清水六兵衛(四代&五代)、諏訪蘇山(初代)、中島菊斎、三浦竹斎(初代&二代)等の名工たちや鉄斎夫人春子刀自等と、鉄斎との合作による茶碗や香炉や盆や花瓶や器局等の各種の道具を特集した展示。陶磁器への絵付はもちろんのこと、愛用の道具を収める箱や、布団や外套にまでも自作の書画を施してあるのが面白い。絵で飾り、或いは絵で解き明かし、文字で由緒を書き記すことへの情熱に圧倒される。
器玩に因んだ書画も併せて出品されていた中で、慶応三年、鉄斎三十二歳の作である小さな画帖「清娯帖」には何種類もの煎茶道具や文房具等が細く確りした線と爽やかな色彩で丁寧に清潔に描かれていた。六十歳代の作である「十二生肖図巻」では十二支を十二種の動物で表現するにあたり、動物そのものではなく動物を象った玩具の姿で表現したのが楽しい。各動物に関する漢文を書き添えてあり、知的な雅趣と愛嬌とが見事に調和している。
三時四十分頃に聖光殿を出て、龍王瀧にも初めて参拝。史料館を見学し、拝殿の諸仏諸神にも参拝したとき、既に夕方四時二十分頃。参道を下れば屋台の多くは既に閉店し、或いは閉店の準備をしていた。四時四十分頃に清荒神駅へ着き、阪急電車で十三駅を経て烏丸駅へ至り、四条駅から京都駅へ着いたのは六時頃。駅前の京都ヨドバシで少し買物をして、地下の天麩羅店で夕食を摂ってからホテルへ戻った。