大切なことはすべて君が教えてくれた第四話

フジテレビ月九ドラマ「大切なことはすべて君が教えてくれた」。第四話。
弱音をはくのは、少なくとも最終回を見たあとにしよう。文句を云うとしても、最終回までは耐えよう。柏木修二(三浦春馬)と佐伯ひかり(武井咲)の間には実は肉体関係はなかった!という衝撃の「真相」が次週の第五話で明らかにされるのかどうかは知らないが、そもそも身体間の結合があったか否かにかかわらず教師が生徒と裸で同衾していただけでも、厳しい制裁を免れ得ないはずだ…というような意見も、云わないでおこう。
今は「恋する鉄道オタク」少年の出番に集中しておくのみ。
今宵九時からこのドラマが始まって約十二分が経過した辺に来た場面のこと。明綾学園高等学校二年一組の教室。授業の合間の休憩時間。数人の男子生徒衆はそのとき、互いの変な顔を携帯電話カメラで撮影して見せ合って面白がるという遊びで盛り上がっていて、これを教室内の皆でやって、変な顔の一位を決めよう!と呼びかけたのに対し、変な顔ではなくカワイイ顔であれば参加してもよい!という反応が女子生徒から帰ってきたところ、一人の男子生徒は突然、「カワイイって云ったら児玉が一位じゃん!」と云って児玉賢太郎(中島健人[ジャニーズJr.])の顔写真を撮り始めた。
丁度その少し前から、彼は眼鏡のレンズの汚れを拭こうとして眼鏡を外していた。平岡直輝(菅田将暉)を含めた他の男子生徒衆も、珍しく眼鏡を外した彼の顔を見て、意外に「カワイイ」素顔に驚き、囃し立てた。普段は誰とも会話することなく一人で黙々と鉄道の時刻表を読んでいるだけの児玉賢太郎は、急に数人の注目を浴びてしまったことに、大いに慌てた。慌てて眼鏡をかけて何時もの自身の姿に戻ろうとしたが、当の男子生徒に遮られて、眼鏡を外した顔を撮影された。
もちろん彼が何時までも話題の中心にあり続けるはずもなく、男子生徒衆の話題は直ぐに移ったが、突然の事件に慌てて急ぎ眼鏡をかけ直そうとしたのを遮られたとき、彼は眼鏡を床に落としてしまっていた。それを佐伯ひかりが拾ってくれて、レンズを拭いてから返してくれた。児玉賢太郎は(第二話で)佐伯ひかりの落とした薬とハンカチを拾って返したことがあったから、このときの佐伯ひかりの、わざわざレンズを拭いて返した優しさは、その返礼と見ることもできる。
この瞬間、佐伯ひかりに対する児玉賢太郎の興味、好意は、片想いの恋として決定付けられたのかもしれない。
その前提として一つ考えておきたいのは、彼に対する男子生徒衆の「カワイイ」という形容にはどのような意味があるのか?という問題だ。もちろん平岡直輝の表情を見る限り、本当に「カワイイ」と感じて驚いた面もあったろうが、最初にそのことを云い始めた生徒に関する限り、やはり、教室内で最も地味な男子を突然アイドル扱いして囃し立てて笑いものにしたかった面もあったろう。これは下手すれば苛めにもなりかねない動機だ。少なくとも、何時も誰とも親しくなろうともせずに無口に地味に過ごしている児玉賢太郎にとっては何とも迷惑な、対処に困る事件だったはずだ。
そうした中で佐伯ひかりがこのとき見せてくれた優しさは、密かに興味や好意を抱いていた児玉賢太郎にとっては、救いの女神が現れたかの如く、一段と光り輝いて見えたことだったろう。
もう一つの場面にも注目しておこう。佐伯ひかりの携帯電話に保存されていた柏木修二の裸の画像が、教室中の話題になったときのこと。生徒の皆が衝撃を受けて騒然となったとき、児玉賢太郎はむしろ周囲の彼等の興奮状態にこそ動揺し戸惑っていたように見えた。当然だろう。この騒動によって佐伯ひかりが傷付くことをこそ彼は心配したに相違ないからだ。