デカワンコ第八話

日本テレビ系。土曜ドラマデカワンコ」。第八話。
今宵の話の冒頭で、新人刑事のワンコこと花森一子(多部未華子)が「なんだか、ハードボイルドな匂いがします」と予告したように、確かに今宵の話は極めてハードボイルドな展開を見せたが、それでも、この基本的に陽気なドラマの味わいが損なわれることはなかった。それどころか、むしろこのドラマの明るい正義感は強化され、何時も以上に盛り上がった。
この第八話がハードボイルドな話になったのは、殺人事件の現場が新宿歌舞伎町で、凶器が拳銃で、被害者も加害者も暴力団員で、しかも違法薬物がそこに絡んでいたからだが、それらに加えて、否、むしろそれら以上に、第一話におけるあの事件の洗い直しを求める事態までもが生じたからに他ならない。
ワンコの最も尊敬する刑事だったガラこと五十嵐太一(佐野史郎)は、第一話における殺人事件の犯人として、そして捜査情報の暴力団への漏洩の犯人として逮捕されて、以来、拘置所にいた。しかしワンコは、ガラには何か秘密がありそうであることを感じ、犯人ではないかもしれない可能性をさえ嗅ぎ取っていた。第一話のあの事件を洗い直すことは、当然、ワンコの(そして視聴者の)待望するところではあった。
だが、この洗い直しには待望と同時に懸念もあった。ガラが犯人ではないことを明らかにすることを、ワンコは(そして視聴者も)待望していたが、反面、元刑事のガラのほかに、警視庁刑事部捜査一課の第八強行犯捜査の殺人捜査第十三係の誰かが犯人であるかもしれないことを、ワンコは(そして視聴者も)心配していたのだ。
物語の解決は見事だったように思う。なぜなら一方において、ガラが犯人であるという事実は残念ながら覆りはしなかったとはいえ、彼もまた正義の味方の一人であろうとしたことは極めて鮮やかな活躍を通して実証されたし、他方において、殺人捜査第十三係の刑事たち皆が誇り高き正義の味方たちであることの揺るぎなさは確かめられたからだ。
警視庁組織犯罪対策部の朝倉丈二(小沢仁志)は暴力団よりも暴力団風の、見るからに怖い男。この犯人からの凄まじい抵抗に遭って危機に陥った局面におけるシゲこと重村完一(沢村一樹)とコマこと小松原勇気(吹越満)とヤナこと柳誠士郎(大倉孝二)とキリこと桐島竜太(手越祐也)とデークことデューク・タナカ(水上剣星)の、ワンコとの間に築かれていた信頼と愛の確かめ合いの場が、実に熱かった。
ワンコを人質に取られてしまい、絶体絶命かと思われた瞬間、颯爽と現れたガラ。既に刑事ではないにもかかわらず刑事の顔をしていた。ガラに助けられてワンコと仲間たちの反撃が始まった。激しく変化に富んだアクションの連続。短かったが、見応えがあった。
警視総監の松田洋雄(伊東四朗)とも親しいワンコの祖父(上田耕一)の正体が、実は暴力団員をも圧倒する木刀の名手で、腕力にも脚力にも秀でた武闘派で、しかも暴力団の親分をひれ伏させる権威のある浅草の大親分でもあったという事実は、水戸黄門にも似たドラマを生んで面白かったが、同時に笑い所そのものでもあった。