仮面ライダーオーズ第二十九話

出勤。異様に疲れた一日。(ゆえに翌日の朝記之。)
ところで。
東映仮面ライダーオーズ/OOO」。
第二十九話「姉と博士とアンクの真実」。
今回のヤミーは、亡き姉にもう一度でも会いたいというドクター真木清人神尾佑)の願いから生まれた。その姿は何時しかパンダ型と化した。上野恩賜公園の東京都立上野動物園(旧東京帝室博物館)にパンダが再上陸した今の季節に相応しい時宜を得た形姿と云えよう。その顔を見るや、流石の仮面ライダーバース=伊達明(岩永洋昭)も何だか攻撃し辛かった。
もっとも、仮面ライダーオーズ=火野映司(渡部秀)であれば、何の遠慮もなく情け容赦なく攻撃できたのかもしれない。
パンダ型ヤミーはカンフーの使い手と見えた。こういうのをカンフーパンダと云うのだろう。
今や伊達明の一番の仲間と化した後藤慎太郎(君嶋麻耶)は、伊達明や火野映司を支援すべく、メダルやグリード、オーズに関する情報を得るために鴻上財団へ復帰することを決意。鴻上財団会長の鴻上光生(宇梶剛士)に頭を下げた。休職して財団の仕事を放棄していた間も彼が伊達明=仮面ライダーバースと一緒に闘っていたことを鴻上光生はもちろん把握していて、そのような活動こそ後藤慎太郎が志していた「世界を守る」道であることも理解していた。だから彼は後藤慎太郎に、なぜ敢えて戻ってきたのか?と問うたが、後藤慎太郎は「食えなくなったからです」と答えた。
無論これは嘘だ。白石知世子(甲斐まり恵)の経営する多国籍料理店クスクシエで働いて生計を立てながら、伊達明の下で修業し、一緒に戦ってきたのだからだ。大きな目的のために敢えて小さな嘘をついたのだ。こういうのを古代ギリシア哲人は「崇高な嘘」と呼んだろう。
鴻上光生が後藤慎太郎の「食えなくなったから」という言に「なるほど!」と叫んで納得したのは、どういう意味からだろうか。後藤慎太郎の言が嘘であることを見抜いた上で、大きな目的のために小さな嘘をつけるようになったことを喜んだのか、それとも、後藤慎太郎の言を鵜呑みにした上で、生活のために正義を犠牲にできるようになったことを喜んだのか。前者か、それとも後者か、何れだったかで鴻上光生の「器」が大きく違って見えてくるだろう。
ともあれ、これによって後藤慎太郎の復帰は一応は承認されたと思しいが、生憎、かつて彼が占めていたライドベンダー隊第一小隊長の職には既に後任が決まり、空席がなかった。そこで予て後藤慎太郎を馬鹿にしていた会長秘書の里中エリカ(有末麻祐子)は会長秘書の補佐員が空席であると提案した。会長の拵えた巨大ケーキを食いながら、馬鹿にしたような口調で。
もちろん後藤慎太郎がこんな馬鹿みたいな仕事を引き受けるはずがないと考えてのことだろう。会長が次から次に拵え続ける巨大ケーキを次から次に平らげることがこの財団における会長秘書の最も重要な業務の一つだが、後藤慎太郎は前に一度それを拒絶したことがあった。思えば彼の迷走の(しかし同時に成長の)始まりがそれだった。
ところが、里中エリカや鴻上光生の予想に反して、後藤慎太郎は直ぐに里中エリカの横に座して巨大ケーキを切り分けて頬張り始めた。あの美しい顔を白いクリームだらけにしながら。それを見た里中エリカも、やや表情を険しくしつつ一段と勢いよくケーキを食べ始めたのは見落とせない。迷走の休職期間を経て心身ともに逞しく生まれ変わった後藤慎太郎の今の勢いを見て、競合相手の出現を認め、負けたくないと感じたのだろう。
両名が食べていたケーキ自体が、新たな後藤慎太郎の「誕生」を祝うためのものだったのかもしれない。