旅行記二東叡山寛永寺清水観音堂/東京国立博物館/国立西洋美術館

旅行記二。
午前十一時半頃にホテルから外出。徒歩で上野恩賜公園へ。先ずは高村光雲西郷隆盛像を見て、慈眼大師天海大僧正の建立になる東叡山寛永寺の清水観音堂(重要文化財)を拝観したのち、東京国立博物館へ。その途上、東京文化会館日本芸術院会館を背にしてチンドン屋が演奏しているのを眺めた。近代の日本芸術界の「官僚制」の牙城とも云うべき日本芸術院会館の前でチンドン屋の演奏が繰り広げられるという面白さ。
東京国立博物館では、先ずはホテルオークラ食堂の天丼で昼食を摂ったあと、庭園を歩き、本館の日本美術ギャラリーを一周した。水墨画展示室では石室善玖賛《繩衣文殊像》が出ていたが、いつ見ても面白い。伝周文筆《四季山水図屏風》(重要文化財)における雪景色の寂しげな深さ。書画展開展示室では狩野伊川院筆《勿来関図》が堂々としていた。
一階の彫刻展示室では延長五年(九二七)作の木造《天王立像》の胴体の厚みが素晴らしかった。《四方四仏坐像》は寛永寺五重塔に安置されていたもの。おひなさま展では、小さな家具調度の数々、特にギヤマンのグラスに見入った。歴史資料展示室では、長崎奉行所の旧蔵品を中心に、キリシタンの祈りのためのロザリオや銅牌、遺物函、切支丹銅版画、マリア観音像等。近代美術展示室では、下村観山筆《春雨》屏風六曲一双がモダンでありながら古雅で格調高く、中沢弘光筆の油彩画《霧(裸婦)》は怪しげに妖しげ。森川杜園作《牝牡鹿》は迫真性に富んだ鹿の姿。
最後に地下の売店で買物をして、閉館時間の四時に博物館を出たあとは国立西洋美術館へ入り、閉館時間の夕方五時半まで約一時半しかない中、特別展「レンブラント-光の探求/闇の誘惑」を急ぎ見て、売店で買物をしたあと常設展を急ぎ一周した。
常設展で注目したのは、新収蔵品の一つ、十八世紀イタリア絵画の巨匠ジョヴァンニ・パオロ・パニーニのローマ風景《古代建築と彫刻のカプリッチョ》。近年この美術館では、十七世紀の古典主義的な歴史画的風景画から十八世紀の古代趣味や廃墟の美学の風景画を経て十九世紀の浪漫主義や自然主義の風景画へ至る流れを着実にたどり得るようなコレクションの充実が図られているように見受けて、実に素晴らしい。
閉館時間の少し前に、美術館の出口でオランダのチョコレイトを購入し、屋外のロダンブールデルの彫刻を観照してから門を出た。チラシ多数を整理するためのクリアホルダーを無印良品で購入し、カレー店で夕食を摂ってホテルへ帰った。