新番組=リバウンド第一話

今宵からの新番組。
日本テレビ系。水曜ドラマ「リバウンド」第一話。
かつて凄まじく太っていた大場信子(相武紗季)は、苦労の末に痩せることに成功していたとはいえ、大好きなケーキを一口でも食べるや歯止めが効かなくなって一気に再び太ってしまうような体質の持ち主であることを自覚できていた。医師の神谷貴之(半海一晃)からも、ケーキを一口たりとも食べてはならぬと厳しく云い付けられていた。
それなのに、少し前まで「スイーツ王子」として持て囃されていて今は人気を失ったケーキ店主の今井太一(速水もこみち)から執拗に請われるままに、新作ケーキ多数の試食を重ね、重ねた挙句、わずか数日間で見事に元の通り太ってしまい、その所為でファッション雑誌の編集者としての仕事をも解雇されて失ってしまった。
なぜ今井太一のケーキの試食を断れなかったのか。
もちろん一つには、(1)大場信子が手掛けた雑誌の記事において、当時は店の前に「行列のできる」程にも大人気を誇った今井太一のケーキの味を敢えて酷評した所為で、彼の店から客がいなくなり、従業員まで逃げてしまったことについて、流石に負い目があったということがあるだろう。だが、もっと重要なこととして、(2)今井太一のケーキが昔日の美味を取り戻すことをどこかで期待していたということがあるだろう。大場信子が今井太一のケーキに失望したのは、かつて幼時に今井太一の父が作った苺のショートケーキの美味に感銘を受けたのを今なお鮮明に記憶していて、その味と比較して期待外れだったからに他ならない。期待が大きかったからこその期待外れであって、ゆえに昔日の、期待通りの美味が復活する可能性を信じ続けることができたのだろう。これと関連して、(3)かつて今井太一の父のケーキから受けた感銘はその作者への片想いの情をも惹き起こしていたから、今井太一の父に瓜二つの今井太一に対しても、片想いの人への想いに等しい想いをどことなく抱かずにはいられなかったということもあるだろう。
要するに、初恋の人によく似た人が現れて、片想いを抱いてしまったことから始まった物語であると解することができる。だが、物語の発端であるはずのこのことが今一つ確りとは描かれなかったような気がする。ゆえに何とも不条理な話になってしまったが、それでも取り敢えず面白かった。
岐阜へ帰郷した大場信子のために今井太一が拵え、三村瞳(栗山千明)に託して届けた苺のショートケーキに、笑顔の記号の飾りが施されてあったのは特によかった。あの笑顔の記号が、大場信子の手帳のカレンダーの色々な「記念日」の欄に貼付されてあった笑顔のシールを模したものであるのは云うまでもない。かつて太っていたことから皆に苛められて惨めな思いをしてきた大場信子は、何か嬉しい出来事がある度に、その日を自分だけの「記念日」に定めていた。そして毎日が「記念日」になる日の来ることを願っていた。しかし、かつて幼時に今井太一の父のケーキに感銘を受けた日については、それが何月何日のことだったか記憶していないので、それを「ケーキ記念日」と定めることができないでいた。今井太一は自身の渾身の一作が大場信子にとっての新たな「ケーキ記念日」になることを願って、祈るようにしてその一作を生み出したのだ。その祈りがあの笑顔の飾りに表れていた。
次週の予告を見るに、大場信子の元恋人の風見研作(勝地涼)は意外な形で物語に再登場するようで、その点も楽しみにしておこう。