渡る世間は鬼ばかり第十部第二十七話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第二十七話。
小島家ラーメン店「幸楽」の小島勇(角野卓造)と田口誠(村田雄浩)に曙商店街の中本源太(山本コウタロー)、川上哲也井之上隆志)、そして「金ちゃんバンド」の金田典介(佐藤B作)を加えて結成された「曙親父バンド」という名の親父バンドの音楽の作品と演奏がどうしてあんなにも多くの人々に感銘を与え、話題を呼び、商業上も成功しつつあるのか。視聴者にそれが謎と見えるとすれば、それは橋田壽賀子ドラマの世界が視聴者の生きる現実世界とは全く異質の価値観に基づいて営まれる世界だからに他ならぬと考えるほかに道理がない。そう考えるとき、あの間抜けにしか聴こえない音楽をあたかも全ての人々に感銘を与え得る傑作であるかのように受け入れることができるだろう。
今回の話は、これまでの激動と、次週予告編に垣間見えた激動との間の橋渡しのようなものだったが、興味深い要素はあった。一つ挙げるなら、高級料理店「おかくら」で働く料理人、森山壮太(長谷川純[ジャニーズJr.])の過労の状況が確と描かれたことだ。実際、彼は早朝から店主の岡倉大吉(宇津井健)に従って築地市場等へ食材の仕入れに行き、午前中から準備して昼の料理を拵え、休憩時間には大井貴子(清水由紀)の家で大井道隆(武岡淳一)の介護に努めたのち、再び店に戻り、夜の営業時間、長時間にわたり多種の料理を次々大量に拵えて、それで疲れ切っているにもかかわらず店を閉めたあとには再び大井道隆の介護に努めている。しかも最近は大井道隆が、身体の不自由に苦心しつつもパソコンを駆使して密かに再開していた仕事が早くも軌道に乗り始めたことで生きる意欲を取り戻したこともあって、身体の復活への意欲も増し、リハビリテイションにますます熱心になっている分、森山壮太の拘束時間も自ずから長くなっているようだ。しかもそれだけではない。彼は家事をこなさなければならないからだ。
彼の過労の現状が確と描かれたのは、彼の健康に何らかの問題が生じる予兆であるのか、それとも無意味な描写だったのか知らないが、今後の彼の健康の様子に注意しておこう。