リバウンド第三話

日本テレビ系。水曜ドラマ「リバウンド」第三話。
かつて「王子」と呼ばれ、傲慢な言動をほしいままにしてきた今井太一(速水もこみち)が、大場信子(相武紗季)と会えなくなったのを機にケーキを食べ過ぎて別人のように太った途端、何事にも自信を持てぬ卑屈な人物に変わり果てた。もちろん注意深く見るなら、かつて傲慢だったときにも卑屈な側面は垣間見えていたと云えるし、卑屈な現在にもなお傲慢な側面は健在ではあって、それが卑屈の中の傲慢でしかないだけに、卑屈な印象をますます深めているだけだとも云えるだろう。
兎も角、体型の変化に伴う容姿の変化、外見の変化は、当人の自信を左右せざるを得ないだけに、態度や発想や思考という内面の変化、心の変化にも繋がってしまうというのは、一般にも認められる真理だろう。精神は身体に宿るのだ。
面白いのは、体型の変化は当人だけではなく周囲の心をも変化させ得る点だろう。イマイチならぬ今井太一の体型の変化と、それに伴う彼の心の変化に対して大場信子の心が変化しかけていたのと同じように、(しかし彼とは逆に)急激な「ダイエット」に成功して体型を見事に細く変化させ、美しくなった大場信子に対して、元恋人の風見研作(勝地涼)の心も変化したのだ。
もっとも、風見研作の心の変化には少々複雑な面がある。
もともと彼は太った大場信子を愛していた。だから一時期は恋人同士だったのだ。太っていた元恋人に対する彼の「ブーコ」という呼び名には愛情がこめられている。ただ、若い彼には世間並みの見栄もあって、球体のような体型の女子と一緒に街を歩くのを少し恥ずかしがるような感情があった。だから別れてしまったのだが、それでもなお本音では彼は太ったブーコを今でも愛していた。だから先日、仕事に疲れた彼はブーコの膝を枕にしながら「これ以上は痩せないで欲しい」と願わずにはいなかった。
しかるに大場信子は見事に痩せて、そして美しくなった。風見研作にとっては初めて見るブーコの真相だった。まるで別人としか思えない程に美しい大場信子に接して彼は緊張し、汗が止まらなかった。しかし彼は元恋人に交際の再開を願った。
これはどういうことだろうか。痩せて美しくなった大場信子を見たからこそ交際をやり直したいと願ったのだろうか。だが、太ったブーコをこそ彼は愛したのではなかったのか。実際、かつて太ったブーコと一緒にいたとき最も幸福を感じることができたことを語りながら、彼は交際の復活を提案した。しかるにそのとき彼の眼前にいた大場信子は幸福の太ったブーコではなく、正反対の痩せた美人で、そしてその美人を前にして彼は幸福を感じるどころか緊張で汗が止まらない有様だったのだ。なかなか矛盾している。