魔女の宅急便

日本テレビ系、夜九時からの約二時間の番組「金曜ロードショー」で一九八九年の映画「魔女の宅急便」を見たのは何度目だろうか。
終盤の、気球に掴まっているトンボを救出するため少女キキが意を決して再び空を飛び、空中の暴走の末、時計塔で救出を果たすに至るまでの激動には、殆ど無理矢理なまでのドラマティクな盛り上がりがあって、流石に興奮せざるを得ない。
この傑作映画における痛恨の欠点は、キキの初恋の人であるトンボが殆ど魅力的に見えない点だろう。大して美形でもない上に軽薄な遊び人で、同じく軽薄な遊び人である男女数名と集団交際をして何時も遊び回っていて、しかもその集団の一人は、キキを愛してくれる老女の拵えたニシン料理を、魔女の宅急便キキを通じて届けてもらいながら、その料理への嫌悪感を表明して憚らなかったその老女の孫に他ならない。
もっとも、それでもキキはトンボとの交際を始めたばかりか、トンボの集団にも自ずから交わるようになったらしいことが終曲の背景の映像からは窺えるから、彼等にとっては外野の第三者でしかない吾人等観者が文句を云っても意味がないのかもしれない。だが、トンボが、性格はあのままでも、せめて美形だったなら、例えば、ハウルのような美男子だったらなら、観者から見て説得力が増したのではないだろうか。