渡る世間は鬼ばかり第十部第三十八話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第三十八話。
高級料理店「おかくら」における店主の孫の進路をめぐる騒動は馴染みの光景ではあるが、今回そこにおいて一寸した暴力沙汰も生じた。これをどう見るべきか。
岡倉大吉(宇津井健)の孫である中学生の本間日向子(大谷玲凪)は、「おかくら」の厨房において祖父の門人として日々朝から晩まで働いている森山壮太(長谷川純[ジャニーズJr.])のような料理人になりたいと志して、大学どころか高等学校にも進学する意のないことを宣言し、「おかくら」において祖父の下で料理道の修業を始めたところだが、母の本間長子(藤田朋子)はそれに反対している。
本間長子はもともと娘が料理人を目指すこと自体に反対していたようにも見えるが、現在は少しは妥協したのか、料理人を目指すにせよ、せめて高等学校に進学し、大学までは卒業して欲しいと要求するようになっている。大学まで卒業するなら、厨房で働き続けること自体には反対しないと云うのだ。
ところが、本間日向子は料理人になるのに学歴なんか要らぬ!と云い張り、中学校卒業と同時に本格的に料理道に邁進したいこと、ゆえに高等学校には進学する意はないことを宣言している。これに対して母は、勉強するのが嫌だから口実として「おかくら」の手伝いをして逃げているのではないのか?と文句を云っていたので、対抗策として本間日向子は猛勉強して期末試験で学級一番の成績を取ってみせた。その気になれば好成績を取ること位は造作もないが、それでもなお志は料理道にあると主張するためだった。
厄介なことに、本間日向子のこの突然の好成績を受けて、今度は中学校の担任教諭が、本間日向子自身に対してではなく本間長子に対して、文句を云い出した。少し勉強しただけで好成績を取ることができる程の子が高等学校にも進学しないで料理人を目指すなんてあり得ない!これは本人の意に反して家業を継がせようという親の身勝手、いわば児童虐待ではないのか?と詰問してきたのだ。
こうして板挟み状態になった怒れる本間長子が、怒りに任せて、本間日向子の頬に平手打ちを食らわしたのだ。
これをどう見るべきか。
なるほど本間長子は本間日向子に対して大いに妥協しているし、料理人を目指している娘に、料理人を目指してもよいが、大学までは進学させてやりたいと云うのだから、一般論でいえば理解のある親であると認めることもできる。これに比するなら本間日向子は余りにも強情で我儘であると云わざるを得ない。問題は、本間長子が本間日向子に手を挙げた動機が、中学校の教諭から理不尽な詰問を受けたことの屈辱と怒りにあることだ。なぜ大学へ進学する必要があるのかについて何一つ納得ゆく理由を提示できないで、単に世間体や体面を気にして娘に進学を強要しているに過ぎないことがここからも明白だろう。折角の妥協も、正論も、これでは台無しではないか。
他方、小島眞(えなりかずき)、大井貴子(清水由紀)、森山壮太、長谷部まひる(西原亜希)、長谷部力矢(丹羽貞仁)の五人の関係についても漸く進展の気配が見えてきたが、今は次週の話を待つべきだろう。