渡る世間は鬼ばかり第十部第四十一話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第四十一話。
最終部の最終回を目前にして、流石に展開は加速し、劇的な場面も相次いできているが、今宵の話の中で印象深かった場面を二三挙げるとすれば、先ずは冒頭の、小島家ラーメン店「幸楽」における小島愛(吉村涼)と長谷部マキ(淡島千景)との対決を挙げたい。孫の長谷部まひる(西原亜希)と小島眞(えなりかずき)との関係が今どうなっているのかを気にして訪れた長谷部マキに対し、開店の直前の最も忙しい時間に無駄話のために来店しないで欲しいと思った小島愛はその思いを率直に表現して長谷部マキを攻撃し、追い出してしまったのだ。
長谷部マキにとっては災難としか云いようもないような場面が、そのあとにも続いた。長谷部まひると一緒に夕食のため高級料理店「おかくら」を訪ね、その際、店主の岡倉大吉(宇津井健)に対し、店主の孫にあたる小島眞と自身の孫である長谷部まひるとが交際をしていることについて礼を述べたところ、店主の孫の本間日向子(大谷玲凪)が、小島真の交際相手としては大井貴子(清水由紀)がいることを暴露してしまったのだ。
幸い、その場には大井貴子自身がいて、既に小島眞とは別れたことを説明し、小島眞と長谷部まひるとの交際を応援していることをも表したが、この説明は逆効果だったようだ。なぜなら大井貴子と長谷部まひるとが極めて対照的であり、共通する部分の皆無であることは長谷部マキには明白である以上、長谷部まひると小島眞との交際という話それ自体が嘘だったに相違ないことも、長谷部マキには明白であると確信できたからだ。孫の結婚を間近なものと信じていた老女にとって、それが全て嘘だったという事実は無念この上なかったろう。
他方、この場面において長谷部マキは一つの収穫を得た。「おかくら」で働いている若い板前(「若板さん」)の森山壮太(長谷川純[ジャニーズJr.])の腕前に惚れ込んだのだ。有馬温泉で旅館を営んでいる長谷部マキは、今、若くて有能な板前を新たに雇いたいと考え始めていて、森山壮太のような「若板」に来て欲しいと感じたのだ。面白いことに、長谷部まひるもまた、森山壮太の友情に篤い熱血の性格と、料理人としての腕前には大いに関心を抱いた様子だった。何かが始まりそうな気配があった。
長谷部まひるに関しては一寸した見所として、森山壮太に電話をかけて会話をしながら、器用に朝食を拵えてみせたところを挙げたい。
今宵の話で最も印象深く忘れ難い場面として、本間日向子がインターネット上で知り合った友、「トモ君」こと乃木智(菊池風磨[ジャニーズJr.])が高級料理店「おかくら」へ挨拶に来たところを挙げないわけにはゆかない。放送会社で開催される料理コンテストへ出場すべく玄関を出た本間日向子の前に、付き人として、保護者として彼が現れたのだ。その爽やかな印象と、古風で生真面目な言動には、岡倉大吉も青山タキ(野村昭子)も森山壮太も、好感を持たないではいられなかった。交際に反対していたはずの本間長子(藤田朋子)でさえ、文句の一つも云えなかったのだ。