旅行記/厳島神社へ参詣

旅行記。
鹿児島への旅行を延期したことについては昨日ここに記したが、折角の連休を有意義に過ごしたいと思案し、今朝、日帰りで安芸の宮島へ参詣することに決めた。
朝八時半に家を出て、道後温泉駅前で朝八時五十六分発のリムジンバスに乗り、九時三十五分に松山観光港へ到着。広島港(宇品港)と松山観光港の間の往復券を購入して十時に港を発ち、十一時十七分頃に広島港へ到着。この間、松山観光港の売店で購入した「いろは屋」の伊予あんぱんで間食を摂った。
広島港へ着いたあと、観光気分で盛り上がって少々のんびりしてしまっていたが、時刻表を確認したところ宮島へ行く船は十一時二十五分に既に発った直後で、次の便までは一時間も待たなければならなかった。それでも、検索した結果、電車等を乗り継いで宮島を目指すよりは一時間後の船に乗る方が早く目的地へ着き得ると判明したので、港の内外を散策したあと、港の中にあるパン専門店で購入したクリームのコロネと小さなジャガイモのパンとジャガイモの揚げ物と、自宅から持参したプロテイン珈琲牛乳で昼食を摂って、昼十二時二十五分発の船に乗り、宮島へ着いたのは十二時五十四分頃。
宮島桟橋を抜ければ早速、木陰で休息する鹿の美しい姿が見えた。
島の至る所に見える鹿の姿に魅了されながらも真直ぐ目的地へ向けて歩けば、間もなく、海上の鳥居が見えた。とはいえ本日は干潮で、大勢の参拝者が鳥居の足元まで歩いているのが見えた。
やがて厳島神社へ到着。一時十四分頃、昇殿と宝物館入場の共通券を五百円で購入し、朱塗の優美な回廊を歩いて、参拝して、図録等も購入して、回廊を抜けたあとは潮の引いた砂浜を歩いて鳥居の足元へ寄った。普段は海水に浸かっているわけだから傷んでいるのが当然であるとはいえ、他の神社では見ることのない鳥居の御姿ではあって、巨木の本性を表しつつも海底の岩を引き上げたようでもある水陸両様の自然な形象が神々しくもあり、誠に味わい深かった。そして鳥居の位置から眺める厳島神社の御姿は、無駄なく簡素でありながら華やいで、優雅で、日本の美の一つの完成形がここにあると思われた。国華という形容が、この景観には相応しい。
海藻と小さな蟹と川のように流れる海水を何とか避けるように努力しつつ砂浜を歩いて無事に上陸したあと、宝物館を探し求めつつ賑やかな参道を抜けて、丘の上の五重塔を見上げ、そして今回の重要な目的地である千畳閣へ到着。
この千畳閣には、「愛媛県管下」の「伊予州今治」出身の画家、沖冠岳が作画して明治八年四月に奉納された大絵馬《猩々図》があるのだ。受付の方に写真撮影の可否を尋ねたところ可であるとの即答。有難いこと。入口の近くにあるのを見出して、暗い中で撮影を試みた。いかんせん天井に接する高い場所に掲げてある上に暗いので上手い具合には撮影できるはずもなかったが、一応満足し、他の絵馬も眺めつつ、千畳閣の広々とした空間と、その周囲の眺望も楽しんだ。高みにあるので風がよく通り、夏の炎天下の午後に、ここだけは天然の清涼感があった。
二時半に千畳閣を出るとき、受付の方に宝物館の位置を尋ねたところ、神殿の回廊を抜け出たら直ぐ眼前にあるとのこと。昇殿の券を持っていれば再入場できるので再び昇殿して回廊を抜け出てみてはどうか?との有難い助言を賜り、その通りにした。二度目の昇殿を果たし、二礼二拍手一礼の拝礼を重ね、殿舎の美に魅了され、鳥居を眺めて、回廊を通り抜ければ、確かに眼前に宝物館があった。
宝物館には二領の甲冑をはじめ、興味深い宝物、史料が色々展示されていたが、私的に最も興味深く見たのは小林千古の油彩画。かつては千畳閣にでも掲げられていたのだろうか、退色が著しいのは惜しいが、それでも、明治の歴史画あるいは宗教画としての迫力が伝わってきた。
宝物館を出たのは三時頃。賑やかな参道を歩き、商店街を見物。牡蠣のコロッケを販売していたので、これを買って持ち帰って今宵の夕食にしようか…とも思ったが、持ち帰り得るような包装をしてもらえないかもしれないと(勝手に)思って泣く泣く断念。紅葉饅頭(「もみまん」)の展示会みたいなイヴェントが行われていたので、チョコレイトやレモンやクリームの紅葉饅頭を購入してさらに歩き、宮島桟橋を抜けて広島港行の乗船口へ到着。往復券を提示して乗船カードを受け取り、宮島桟橋の売店で《厳島平成絵馬鑑》を購入。この書籍を入手することも今回の目的の一つであり、ここで発見することを得て大いに安堵し満足した。目的を全て達成できた。
夕方四時に宮島港を発って四時二十二分に広島港へ着いた。大急ぎ待合所へ行き、往復券を提示したところ四時三十分発の松山行に間に合うとのこと。感激しつつ急ぎ足で向かってその便に乗り込み、五時三十八分には松山観光港へ到着。五時四十八分発のリムジンバスに乗って六時半には道後へ帰り着いた。買物をして帰宅したあとは海風に接した全ての衣服を洗濯機で洗い、靴を洗い、身体と髪も洗った。
今回の旅行で得た教訓としては、新幹線の通っていない現状の松山から本州へ渡るにはJRよりも船を使用する方が早くて便利であるということがある。今まで松山観光港までの移動が難しいと思い込んでいたのだが、道後温泉駅前のバス停留所からは一時間に一本、松山観光港行のバスが出ている事実をようやく知り得たので、今後は大いに活用してもよいかもしれない。