パーフェクト・ブルー第五話

宮部みゆきミステリー「パーフェクト・ブルー」。第五話。
若い夫妻の犯罪に加担させられていた幼女の、被害者を愛すると同時に、被害者と自身への加害者である両親をも愛する純真な愛らしさを盛んに強調しておきながら、この幼女こそが事件の全貌を最も正確に掌握して巧妙に行動していたことを示唆して終わった話。その真実を知るのは唯一、元警察犬マサだけ。
怖い話であるのか、笑話であるのか。
御園明子(杉田かおる)が孫のような年齢の幼女に自身を「おねえさん」と呼ばせようとしたのも、笑話の度合を高めてしまったろう。
さて、ここから本題。
主人公の通っているBAR「ラ・シーナ」の若い店員、諸岡進也(中川大志)の今週の出番は多かった。前半三十分間に集中し、後半には皆無かと見えたが、最後に極めて印象深い出番が一つ来た。
最初の出番は番組開始から二分半ばかり経過した時点に来た。元気のない様子の蓮見糸子(高橋春織)を連れてラ・シーナへ戻ってきた。誘拐の被害者と思しい幼女を発見した糸子が誰かにスタンガンで襲われ、路上に倒れていたのを進也が発見して、保護してきたとのこと。主人公の蓮見加代子(瀧本美織)は妹のこの話をなぜか嘘ではないかと疑ったことから、糸子と進也は犯人を捕まえるべく事件を調べることを宣言した。彼は黒い服の上に黒の薄手の上着。約一分間の出番。
加代子が糸子の話を疑ったのは、糸子と進也の仲を疑ったからではないか。恐らくは加代子は進也に保護された糸子に嫉妬したのだ。
二つ目の出番は番組開始から九分ばかり経過した時点。進也と糸子の調査活動に、蓮見探偵事務所の頼り甲斐あるオバサン、「ミミサン」こと三浦美智子(根岸季衣)が協力してくれることになり、三人で事件の現場へ向かった。途上、路上を歩きながら進也と糸子は温かい肉マンを食べ、美智子は冷たいアイスクリームを食べていた。ここで進也はピンク色の服の上に青いチェック文様のシャツを着て、紺色の上着を重ねていた。約一分半の出番。
三つ目の出番は番組開始から十三分半以上の時点。ラ・シーナの店内。ピンクの服。進也と糸子が追っていた事件が、どうやら加代子の調査していた事件と繋がっているらしいと判明し、蓮見探偵事務所長の蓮見杏子(財前直見)は、今後の調査を蓮見探偵事務所で全て引き取ること、ゆえに糸子と進也には今後は手を引いてもらいたいことを告げた。進也は不服の様子だった。約二分間の出番。
四つ目の出番と五つ目の出番は連動していた。四つ目の出番は番組開始から十八分の時点。糸子の事件の現場だった駐車場で、事件に使用された自動車の持主が家から出てくるのを見張り、別の位置に待機していた糸子へ合図を出した。次いで五つ目の出番は番組開始から十九分の時点。車の主である植草篤(モロ師岡)を追って銀行の窓口に行った糸子が植草に近付き過ぎて調査に失敗しつつあったとき、意外な仕方で巧く助けて、しかも重要な事実を掴んでみせた。この事実はその後の真相究明にも大きな役割を果たした。実に大手柄だった。数秒間の出番だったが、意味は大きかった。灰色の服の上に黒いチェック文様のシャツを着て、紺色の上着。
六つ目の出番は番組開始から二十七分半ばかり経過した時点。ラ・シーナは住宅街のある丘の中腹にあるようで、道路は石段になっている。この石段を勢いよく登り、店に出勤しようとしていたらしい進也は、荷物を両手に持っていた。店のための買物をしてきたのだろうか。店の前で彼の出勤を待っていた糸子に気付いて、二人並んで石段に座して会話。加代子が糸子に厳しいのは糸子を心配するからだと語る彼は、自身もまた糸子を襲撃した犯人を何としても捕まえたい思っていることを語った。
最後、七つ目の出番は番組開始から五十一分ばかり経過した時点に来て約三十秒間。ラ・シーナの店内。店主の椎名悠介(寺脇康文)が誰かへ電話をかけようとしていたところ進也が店内へ入ってきて、店主は慌てて電話をかけるのをやめた。進也は店の前で掃除をしていたのだろうか。学校へ行かないのか?と尋ねた店主に、進也は今日が日曜日であることを告げた。両親とは連絡を取っているのか?と店主は尋ねたが、進也は返事なく、何か思い出していた。それは第一話の冒頭にあったあの焼死を眼前にして悲鳴を上げていた事件の記憶だった。