仮面ライダーウィザード第十七話

平成「仮面ライダー」第十四作「仮面ライダーウィザード」。
第十七話「もう一人の魔法使い」。
第二の魔法使いが出現した。その名をビーストと云い、ビーストに変身するのは仁藤攻介(永瀬匡)という変な人物。常に極めて陽気だが、常に空腹に苦しんでいる。ゆえに食べ物を供されれば喜んで食べるが、反面、どんな食べ物でも(例えばソーセージでもドーナツでも)、常に携行している調味料を用いてその強烈な味付で誤魔化さなければ食べられないらしい。なにしろ彼の生命を維持するために不可欠の食糧は、人間の食べ物ではなく、ファントムの魔力であるからだ。
ウィザードに変身する操真晴人(白石隼也)に比較すると、色々な面で異なっている。人物に関して現時点で見比べるなら、操真晴人が、若いのに、あたかも仙人のような無欲恬淡の言動の内に、大切な人々を失った悲しみと孤独の苦しみを抱え、人々が絶望に陥ることへの恐怖に怯えつつ、たとえ自身を犠牲にしてでも人々を守りたいという情熱を燃え上がらせ、人々の「最後の希望」であろうとして闘っているのに対し、仁藤攻介は、周囲を見るでもなく人々を考えるでもなく、どこまでも自身のことのみを考え、ゆえにどこまでも陽気で能天気で、しかるにそれだからこそ絶望をも希望に転換させ得る程の強い精神力を具えていて、そして人々を守るためではなく自身の生命の維持のため、自身の生活のためにファントムと闘っている。
操真晴人の戦闘は、人々に希望を取り戻してもらうための「ショータイム」だが、仁藤攻介の戦闘は彼自身のための「ランチタイム」でしかない。
仁藤攻介の出現は、戦闘の度に魔力を消耗しながらも何とか魔力を強化し続けて孤軍奮闘してきた操真晴人の負担を大幅に軽減し得るが、対する仁藤攻介は大切な食糧を横取りしかねない競合相手として操真晴人を敵視せざるを得ない。
もっと本質的な問題として、操真晴人はファントムを全て消し去らなければならないと考えているが、仁藤攻介は自身の生命の維持のための食糧としてファントムを必要としている以上、ファントムを全て消し去られては困る立場にあるという点があることは見逃せない。操真晴人の最後の敵は、ファントムではなく、ファントムの天敵の仁藤攻介であるのかもしれない。
仁藤攻介がビーストに変身したとき、ワイズマン(古川登志夫)は「古の魔法使いか」と呟いた。ビーストが旧時代の魔法使いであるならウィザードは新時代の魔法使いであるのだろうか。魔法使いという存在の仕方に新旧の二様式があり、旧式から新式へ変遷した歴史があるなら、その歴史上の位置の差がファントムに対するそれぞれの対峙の仕方の差に表れて、今後の展開に意味を与えてゆくのかもしれない。