弱くても勝てます第三話

土曜ドラマ「弱くても勝てます」第三話。
小田原城徳高等学校野球部の中で異彩を放つのは、吹奏楽部から流れてきた亀沢俊一(本郷奏多)。野球のことなんか何も知らない。だが、驚くべきことに野球のことを何も知らないのは彼だけではなく、むしろ野球部員の一部しか野球のことを知らない。今のところ弱くても勝てるとはとても思えない。
亀沢俊一は大変な苦学生であると判明したが、あの貧しい住居は借家だろうか。一軒家だが、アパートの類よりも安いのだろうか。そして亀沢俊一とは正反対の境遇にあるのが赤岩公康(福士蒼汰)。広い庭のある大豪邸には執事も女中も仕えている。彼が家出をして友人の家を転々としているのは父の赤岩晴敏(光石研)が働こうともせず、幼馴染の女子の母に言い寄っていることに反発しているからだが、そもそも父が働こうともしないのは、もはや金を稼ぐのが無益である程に余りにも豊かであるからに他ならない。亀沢俊一とは比較にもならない恵まれた境遇だったのだ。
しかるに、学校からの帰途の海辺の階段で、赤岩公康と亀沢俊一、白尾剛(中島裕翔)、江波戸光輝(山崎賢人)、岡留圭(間宮祥太朗)の五人が駄菓子か何かを食べながら会話をしていた姿にはそうした「格差」はなかった。…というよりは、あったのは気の弱い江波戸光輝をかつて苛めていた岡留圭に対する江波戸光輝の弱気な態度と、家出中の赤岩公康の貧しさだった。この場面では亀沢俊一でさえ駄菓子を食べていたのに、赤岩公康だけは食べ物を手にしてはいなかった。
ここだけ見る限り、赤岩公康だけが恵まれない境遇にあるかのように見えてしまうが、その直後に、亀沢俊一の貧しい居所に泊めてもらうべく押し掛けた赤岩公康が「随分とボロいな」と呟く場面が来て、さらに漸く家に帰った赤岩公康が豪奢な玄関で執事と女中に迎えられる場面が続いて、意外な真相が視聴者に開示されたのだ。
全体としては物凄く変なドラマではあるが、赤岩公康を家に泊めてやった亀沢俊一が翌朝早くに一人静かに目を覚まして新聞配達に出かけたあと、赤岩公康の、寝たフリをしながら友を見送ったあと苦学の友のために何か自分にできないかを考え込んでいた様子は印象深かったし、今日の話の最後、赤岩公康と白尾剛、江波戸光輝、岡留圭の四人で亀沢俊一の新聞配達を手伝い始めた場面は、土曜ドラマに相応しい爽やかさに満ちていた。