水球ヤンキース第十話=最終回

土ドラ「水球ヤンキース」第十話=最終回。
全国高等学校水球大会における栃木県大会の初戦は、霞野工業高等学校水球部と水蘭高等学校水球部との決戦。県内の高等学校に水球部は二校しかなく、ここで勝った側が県大会の優勝者になる。そしてその結果だけを云えば、前年度の全国大会で優勝した水蘭高等学校水球部を今年のこの試合で下した霞野工業高等学校水球部(通称ミズタマ部)は、そのまま全国大会でも優勝したらしい。しかしドラマが描くのはあくまでも県大会におけるこの決戦のみ。
ドラマにおける見所の一つは、木村朋生(千葉雄大)、志村公平(中川大志)、加東慎介(吉沢亮)の三人組や千秋亮(間宮祥太朗)と宮口幸喜(矢本悠馬)の二人組が、今まで散々彼等への嫌がらせを仕掛けてきた水蘭高等学校水球部の乱暴者連中に対して、「水中の格闘技」の特性を生かして水中で蹴ったり殴ったりして報復してみせたところにある。思うに多分、これまで彼等がやられ続けてきたのは、多勢に無勢だったことや、町内の人々までもが先方の肩を持っていたことに因るのと同時に、彼等自身が身体力において劣っていたばかりか、そもそも弱気になっていて、戦意を持ち合わせていなかったことに因るところ多大だったのではないだろうか。しかるに今や、そうした敗因は全て一掃された。試合の場面では人数は対等であるし、町内の人々は霞野工業高等学校水球部の応援に回っているし、何よりも、彼等自身がこの日までに大いに鍛えて強くなった上で戦闘態勢に入り、勝とうとしていた。反撃してくるはずもないと思い込んでいた相手から確り反撃を受けたことで水蘭高等学校水球部の連中の側が動揺してしまった面もあったろう。
気に入らないことの一つは、試合の前夜、稲葉尚弥(中島裕翔)を背後から襲撃して肩を負傷させた郷田剛(鈴木伸之)が殆ど何も咎められなかったこと。あり得ない話だ。北島虎雄(高木雄也)がライヴァル三船龍二山崎賢人)の強さを認めて和解し、稲葉尚弥にも敬意を表して、さらには水蘭高等学校水球部の皆が正々堂々と戦うことの喜びを霞野工業高等学校水球部の皆と共有するに至ったことによって、正々堂々と戦おうとはしてこなかった郷田剛は完全に立場をなくした格好だが、この結果は、郷田剛の今までの悪事の数々に対する報いとして適正であるとは思えない。