仮面ライダードライブ第三十五話

平成仮面ライダー第十六作「仮面ライダードライブ」。
第三十五話「籠城事件はなぜ起きたのか」。
この物語では毎回の話に、あたかも視聴者に対して問いかけるかのような題名が付されているが、今回の話では何とも珍しく、この問いかけがそのまま話の始まりであり、この問いかけに答えてゆくようにして話が進行した。なぜなら、話の冒頭には既に唐突にも籠城事件が起きていて、その後は、時間をさかのぼり、前回の話のあとに一体どのようにして籠城事件が起きるに至ったのかを明かしていったから。
籠城事件の当事者は、ドライブに変身し得る警視庁特状課巡査の泊進ノ介(竹内涼真)と、その敵であり親の仇である警視庁捜査一課長の仁良光秀(飯田基祐)。事件の真相においては仁良光秀が籠城事件を引き起こし、泊進ノ介は人質にされたわけだが、仁良光秀はそれを逆転させ、あたかも泊進ノ介が仁良光秀を人質にして籠城しているかのように見せかけ、警察を呼び、報道させた。
この罠を成功させるための前提として、ロイミュード003=ブレン(松島庄汰)と仁良光秀との共謀により、警視庁捜査一課長の名において報道各社に対し、今までのロイミュード事件の数々を全てドライブや警視庁特状課の仕業であるかのように発表し、併せて特状課の関係者全員を逮捕、逃したドライブ=泊進ノ介を指名手配しておいたということがある。ゆえに泊進ノ介と仁良光秀を当事者とする籠城事件が起きた場合、前者が後者を人質にしたと誰もが思い込んでしまう。
もっとも、仁良光秀の本来の作戦では、特状課の全員を逮捕する際にはもちろん泊進ノ介をこそ逮捕するはずだったわけだが、そこで泊進ノ介を逃してしまったのは、特状課長の本願寺純(片岡鶴太郎)が泊進ノ介を何としても逃してやるべく咄嗟の作戦に走り、他の皆がそれに気付いて呼応して協力したからだった。この時点で仁良光秀の作戦には番狂わせが生じたと見ることもできなくはないが、どうやら、このような番狂わせが生じること自体を、仁良光秀は予想し、むしろ期待していたらしい。それこそが真の罠だったらしい。ブレンと連携して巧妙に泊進ノ介を誘導し、ついには籠城事件の犯人に仕立て上げてしまったのだ。
籠城事件を起こさせるまでの作戦において極めて巧妙だったのは、特状課の人々を逮捕し、チェイス上遠野太洸)をブレンとの戦闘で足止めさせることによって、ドライブ=泊進ノ介を救援し得る者を予め排除しておいた点にある。
唯一、マッハ=詩島剛(稲葉友)だけは自由に動き回り得る状態にあった。ブレンと仁良光秀の罠は彼には及んでいなかったと思しい。両悪党にとっては幸いにも、詩島剛がブレンから奪い取った蛮野天十郎(声:森田成一)の頭脳を保全する蛮野パッドを、ロイミュード002=ハート(蕨野友也)が奪還すべく詩島剛の前に現れたおかげで、結局はマッハも足止めされることになった。だが、もしハートがこのような行動に出なかったなら、籠城事件の行方は一体どうなっていたろうか。ブレンと仁良光秀は、策略に秀でているように見えながらもどこか甘いと云わざるを得ない。
今回の話では、今までも常に警視庁捜査一課長には似つかわしくない軽薄な言動を繰り広げてきた仁良光秀が今まで以上に軽薄な言動を盛大に繰り出し続け、他方、ブレンも、超進化態になって得た力でロイミュード009=メディック(馬場ふみか)に反撃し、チェイスに復讐して、大いに調子に乗っていた。そうした両悪党の阿保な振る舞いとの対比において、いよいよ重厚な趣を増してきたのが本願寺純。そして重みを増してゆく程に、従来通りの彼の軽みが改めて趣と面白味を増してきたとも云える。