仮面ライダードライブ第四十三話

平成仮面ライダー第十六作「仮面ライダードライブ」。
第四十三話「第二のグローバルフリーズはいつ起きるのか」。
チェイス上遠野太洸)は恋の悩みに夢中。詩島霧子(内田理央)への想いに関して泊進ノ介(竹内涼真)や詩島剛(稲葉友)に相談し始めた。その影響が泊進ノ介にも及んで、何だか調子を狂わせていた。
だが、どうやらこのことは物語の流れの大きな変化を際立たせ得るらしい。
なぜなら混沌を極め始めているロイミュード陣営の中で今、あらためて「感情」とは何か?という問題が浮上しているようであるから。
一般に、機械は感情を有しないが、凄まじく高性能の機械であるロイミュードは人間に等しい程の豊かな感情を有し得ることが劇中に語られてきた。実際、ハート(蕨野友也)とチェイスはそのことを自ら証明してきたと云える。ブレン(松島庄汰)も強烈な嫉妬心の持ち主であるし、メディック(馬場ふみか)は強い愛情の持ち主であり、泊進ノ介はハートやチェイスやメディックの感情に対して共感し得るところがあると感じていた。
しかるに、今回、ブレンは己の感情が単なる模倣、単なる複写でしかないことを認知した。ブレンの容姿も性格も能力も他の一切の個性も全て、グローバルフリーズのとき「中央情報局」で孤独に対策を練っていた中央情報局副所長の杵田光晴(松島庄汰)から写し取ったものだった。自分自身のものであるかに見えても、元来は自分自身のものではない。そのことの虚しさ(という新たな感情)をブレンが抱いて、物思いに耽り、やや落ち込んでいたとき、さらに嘲笑するかのように現れた蛮野天十郎森田成一)は冷酷にも断言した。ロイミュードの感情は複写でしかないということを。
蛮野天十郎こそはロイミュードの開発者であり、ゆえにロイミュードについて彼の語ることは、ロイミュードにとっては神の声にも等しい真理であるほかない。この真理は、ハートの今までの戦いを嘲笑して無効化することだろう。ハートを敬愛し続けているブレンがこれをどのように受け止めるのか。
それにしても、ブレンが複写物として生きることの虚しさを感じ始めたのとは鋭い対比をなすのが、蛮野天十郎に他ならない。予めロイミュード004を忠実な部下として確保しておいた彼は、ハートがクリム・スタインベルトクリス・ペプラー)を襲撃した十五年前のあの夜、ロイミュード004をその現場へ同行させておいて、亡くなる直前のクリムを密かに複写させておいた。こうして彼はクリムの能力をそのまま有する天才科学者を配下に獲得していた。しかも彼は、この悪の心を持つ偽クリムに命じて、ドライブドライバーと化した「ベルトさん」(声:クリス・ペプラー)の贋物をも拵え、それを己の新たな身体とした上で、超進化体ロイミュード006に寄生して新たな黄金の偽ドライブ、「ゴルドドライブ」をも誕生させた。それは仮面ライダードライブの偽者であると同時に、ロイミュードの偽者でもある。このように、今や蛮野天十郎はどこもかしこも偽者、複写物で固められている有様だが、そのことに虚しさを感じている様子は皆無。ブレンと蛮野天十郎と、何れの方が健全であるのか。