仮面ライダードライブ第四十四話

平成仮面ライダー第十六作「仮面ライダードライブ」。
第四十四話「だれがハートを一番愛していたか」。
泊進ノ介(竹内涼真)は詩島霧子(内田理央)を想っているが、それを誤魔化し、隠していて、対するに詩島霧子も泊進ノ介を想っていることを誤魔化している。両者それぞれが似ていることを見届け、両想いであることを理解したチェイス上遠野太洸)は、「人間は時に悪意のない嘘をつく」と認め、「失恋」という感情を知った上で、詩島霧子の思いを守るため己を捧げることを決意した。異形のヒーローそのものと云うべきだろう。
対するに、人間ではなく機械生命体であるにもかかわらず「悪意のない嘘」をついたのがブレン(松島庄汰)だった。蛮野天十郎森田成一)がメディック(馬場ふみか)の身体に仕組んだ恐ろしい装置の存在を鋭い頭脳によって読み抜いたブレンは、その装置を己に引き受けることでメディックを救出することを決意した。メディックの死によってハート(蕨野友也)を悲しませることを避けるため。ハートを喜ばせるため、己を犠牲にすることを決意したのだ。だが、そのためには先ずは蛮野天十郎に屈従してみせなければならなかった。それは表面上、ハートを裏切ることだった。あんなにも冷酷だったブレンは、冷酷な言動を導く嫉妬の情において確かに人間に近付いていたとは云えるが、今や、その水準をも超えて、ハートを敬愛し、メディックを憐れみ、蛮野天十郎を憎んで、そして「悪意のない嘘をつく」境地にまで達した。ブレンこそは最も豊かな感情を持つロイミュードになったということに他ならない。ブレンの自己犠牲によってメディックは感情を取り戻し、生き残った。
ブレンの裏切りに接したときハートは「ブレン、おまえだけは俺を裏切ることはないと信じていたのに」と云ったが、これはハートが真に信頼していたのはブレンだけだったということであり、この一言だけでブレンは救われたと考えてもよいのかもしれない。