Free!第五話&第六話&第七話&第八話&第九話

借用中の「Free!」DVDから、第五話と第六話と第七話を視聴。第八話も再び視聴したのち、第九話を視聴。
第五話。
夏季休暇期間を利用して、離島で岩鳶高等学校水泳部の合宿。
松岡江が発案し、葉月渚が大いに盛り上がって賛同し、橘真琴が受け入れたばかりか実現のため尽力した。橘真琴がこの合宿の実現へ向けて誰よりも熱心に動いたのは、皆が一緒に泳いだり合宿したりして楽しんでいるところを見たいと思ったからだが、反面、彼の内面には不安があった。もちろん七瀬遙はその不安の原因を知っていて、最初から心配していたが、自由を愛する彼は橘真琴の優しさと情熱を尊重し、己の不安を敢えて抑えていた。
面白いことに、同じとき同じ場所で偶々同じく合宿していた鮫柄高等学校水泳部の松岡凛は、偶々遭遇した妹の松岡江から岩鳶の連中が海辺で合宿していることを聴いて、咄嗟に橘真琴を心配しないではいられなかった。このことは松岡江に、兄が本来は七瀬遙や橘真琴や葉月渚の仲間であるべきではないかということを感じさせた。
そして終盤。竜ヶ崎怜は己の実力の不足を少しでも挽回すべく夜中に一人で海に出て、風雨に見舞われ、それに気付いた橘真琴は、荒波を見て過去の恐怖を想起しながらも仲間を助けるべく海へ走った。
第六話。
竜ヶ崎怜を助けようとして、橘真琴も急に動けなくなり、ともに溺れていたが、七瀬遙が橘真琴を救出し、葉月渚が竜ヶ崎怜を救出した。
七瀬遙と葉月渚が救助へ向かい得たのは、七瀬遙が橘真琴の声を聴いて咄嗟に目を覚まし、異変を察して葉月渚をも起こしたからだった。七瀬遙が聴いたのは、竜ヶ崎怜が溺れていることに気付いて救助に向かおうとしたときの橘真琴の声だった。だから七瀬遙と葉月渚が救助に向かったときは橘真琴と竜ヶ崎怜が溺れ始めた直後であり、未だ事態が深刻化しない内に救助に向かい得たのが不幸中の幸いだったろうか。微かにしか聞こえなかったに相違ない橘真琴の声に瞬時に反応し得た七瀬遙の感覚の鋭さ、判断の確かさ、行動の速さが素晴らしい。橘真琴と七瀬遙の心が通じ合っているからこその反応だったのかもしれない。
この、人命にかかわる大事件を描いた第六話には、殆ど奇妙なまでの内容の豊かさがある。なにしろ人命救助の壮絶な場面のあとには、四人が漂着した先の、無人島化した島にある廃屋化した「レストハワス」で肝試しが始まり、夜を明かすための奇妙な夜食と、馬鹿な話が続いたかと思えば、橘真琴の口からは、海に対する彼の恐怖心の原因をなした重い思い出が明かされたのだ。
幼時の橘真琴の大好きだった隣町の漁港の老漁師、その漁師がくれた夏の祭礼の屋台の金魚、そして嵐の夜の海難事故による漁師との死別。なぜか時を同じくして金魚とも死別した。事故があったのは三キロメートル先の海上で、この意外なまでの距離の近さこそが、平穏に見える海に秘められた底知れぬ恐ろしさを、幼時の橘真琴に突き付けた。悲しさ、怖さに苛まれていた橘真琴の心身の拠り所になったのは、当時から一番の友だった七瀬遙に他ならなかった。
このように実に重く深い事実を明らかにした第六話には、同時に、色々馬鹿な話も盛り込まれていた。中でも傑作だったのは七瀬遙の恋の話。小学生のとき彼は山に登って見事な滝に遭遇し、一目で惚れ込んだ。それが初恋だった。
橘真琴が皆と一緒に泳ぎたいと語るのは、七瀬遙と一緒に泳ぎたいと語っているに等しいように見える。そして七瀬遙と一緒でなければならないと語る橘真琴と、それを聴く七瀬遙は、「ハイ☆スピード!」における橘真琴と七瀬遙に近い。
第七話。
一転して主に松岡凛の物語。話を聴くのは鮫柄高等学校の寮で同室に住んでいて、しかも松岡凛に憧れている似鳥愛一郎。
終盤、いよいよ県大会の予選があり、その最初の種目であるフリー百メートルで七瀬遙が油断したのか松岡凛にわずかに敗れ、二位に終わって決勝に進出できなくなるという意外な結末。これに続く第八話を既に二日前に視聴したが、なるほど、このような展開からのあのような流れだったのか。
第八話。
再び視聴したが、やはり物語の流れの中で見直すことには意味がある。面白さが違ってくる。
七瀬遙と橘真琴それぞれの背中の美しさが印象深いが、もっと美しく印象深いのは、仲間の泳ぐ姿を見詰めて心動かされていた七瀬遙の眼差し。そして彼が心機一転、心身を甦らせるためには、夜中のプールで水の流れに身を任せ、まるで魚のように自由に遊泳しなければならなかった。その優しく流麗な動作は、映画「ハイ☆スピード!」における七瀬遙と橘真琴の着衣のままの遊泳のあの美しさを想起させる。
第九話。
七瀬遙が存分に泳ぐ姿は、見ていて最高に心地よく盛り上がる。「ハイ☆スピード!」における興奮と感動が思い出されてくる。
もちろん七瀬遙へメドレーリレーをつないだ橘真琴、葉月渚、竜ヶ崎怜の連携も良かった。ようやく本来の実力を取り戻した橘真琴、葉月渚の見事な動作と、他を圧倒して寄せ付けない七瀬遙の完全性。最高の力量と連携を見せる三人に混じるのが、努力しているとはいえ未だ経験の浅い竜ヶ崎怜であるという事実は、松岡凛を嫉妬で狂わせるに充分だろう。必然と云ってよい。
四人は県大会のリレー決勝戦で優勝。この最高に格好よかった場面のあとには、賑やかに楽しい夏祭が来た。
地元の住民である七瀬遙や橘真琴や葉月渚にとってはイカの食べ物やイカの提灯、イカ掴み大会で盛り上がるイカ祭。しかし本来は八幡神社の祭礼で、鮫柄高等学校水泳部にとっては地方大会の戦勝を祈願する恒例行事。ここで七瀬遙と松岡凛が鉢合わせをしそうになり、それを回避すべく葉月渚が竜ヶ崎怜に松岡凛の尾行を命じるという奇妙な事態へ展開した。
このことが二つの事件を派生させた。一つは、かつて小学生時代に七瀬遙と橘真琴と葉月渚と一緒に泳いだリレーに対する松岡凛の思いの深さを、竜ヶ崎怜が察するに至ったこと。もう一つは、新たな四人で泳いだ今夏のリレーが、橘真琴にも七瀬遙にも、かつて最高度に感じ取ったリレーの素晴らしさを再び感じ取らせたこと。しかも橘真琴がそれを七瀬遙に明かしたとき、七瀬遙は目を輝かせた。七瀬遙は自身が抱いた思いを橘真琴も同じく抱いていたと知って感動し、同時に安心したのだろう。二人の歩みには常に二人の共感が必要であるように見える。