大全集第十二巻所収フエール銀行

藤子・F・不二雄の「ドラえもん」の膨大な作品群の中には名作の誉れ高いものが数多あるが、冷戦時代の核武装の論理を鮮やかに描き出した作品として「ペンシル・ミサイルと自動しかえしレーダー」がある。これの内容を確認しておきたいと思い、藤子・F・不二雄大全集ドラえもん」第十二巻の半ば辺にある幾つかの話を再読。
同巻には「フエール銀行」という話もあるが、これも凄まじい。
事物を無限に増加させ続けることの恐ろしさを描いた話としては「バイバイン」(大全集「ドラえもん」第八巻所収)があまりにも有名だが、「フエール銀行」も怖い。この中でドラえもんは十円を例に挙げて、それが一週間後には九千万円にまで増えることを述べているが、これで仮に一万円を預金した場合、二日後には九十七万円、三日後には九百五十五万円、四日後には九千四百十万円、五日後には九億二千七百九万円、六日後には九十一億三千百五十九万円、七日五には八百九十九億四千三百七十七万円、八日後には八千八百五十九億二千二百十三万円にもなる。ここまでの大金はとても使いようがないだけではなく、税務署から追及されようものなら出所を説明できず大いに困ることになるに相違ない。