放課後ヒーロー第一巻

夜、ウダノゾミ『放課後ヒーロー』第一巻を読んだ。帯には「「田中くんはいつもけだるげ」の原点」と書かれていて、その脇に描き添えられた田中くんが「へー・・・」と云っている。「田中くんはいつもけだるげ」では主人公の田中くんが自ら主人公の地位を放棄しようとしているのに対し、「放課後ヒーロー」では主人公と位置付けられている「ナルくん」こと成瀬ひろやが他の個性豊かな人々に紛れてしまい、主人公の地位を維持できないでいる。そこが両作品の違いであると同時に、少し似ている点でもある。しかし無論、そのゆえに「原点」であるわけではないだろう。むしろナルくんにいつも付きまとう黒糖みやびの、他人の眼なんか全く気にしない自由な振る舞いこそは、一見したところ全く似ていないどころか正反対でさえある田中くんという人物像の原型であるとも云える。常識にとらわれない自由な人物と、それに振り回される常識ある人との関係。さらに両名の周囲にあって話を広げる個性に富んだ二人の仲間たち。このような人物の配置が、「放課後ヒーロー」から「田中くんはいつもけだるげ」へ継承された部分であるのは間違いない。
興味深いのは、黒糖みやびの人物像を「田中くんはいつもけだるげ」においてそのまま受け継いでいるように見えるのは加藤である点。また、鷲塚えいしが小さな弟と妹を大切にしている点も、加藤に受け継がれている。「田中くんはいつもけだるげ」の加藤は、もう一人の主人公にしてもよいのではないかと思われる程に魅力ある人物だが、実はそれは、加藤の設定に「放課後ヒーロー」における作者のこだわりが色々投じられているからではないのだろうか。