怪盗ジョーカー第三十四話におけるアラビアンナイトの真相

テレヴィアニメ「怪盗ジョーカー」。NTTひかりTVのWEB配信で視聴。
第三十四話「魔神ランプと予言の宮殿」。
予言探偵アリババと四十人の探偵団という強力な敵が登場し、徹底してジョーカーを追い詰めたが、対するジョーカーはどんな事態に見舞われようとも逆転できるためのトリックを密かに仕掛けておくだけの余裕を見せて、予言を圧倒する予言で切り抜けた。「未来なんて、どうなるか分からねえから面白いんだし、永遠じゃねえから、生命ってのはオタカラなんだ!」というジョーカーの信念に赤井翼=フェニックスは感心し、アクルックス=ホッシージョーカーに懐いているのも当然であると納得していたのも印象深い。
ジョーカーの格好よさが存分に描かれるが、面白いことに原作は初期の話。小学館てんとう虫コロコロコミックス『怪盗ジョーカー』第一巻の「魔神ランプの宮殿」。第一巻の第二話で、本当に初期の話。だが、アリババと四十人の探偵団が初めて登場する話でもあることで名高い。
アニメ版のこの話も原作をかなり忠実に再現しているが、大きく違う点は、魔神ランプを有する宮殿の主としてアラジン国王という老人を登場させたこと、そして老アラジンの先祖にあたる初代アラジンに富と地位を授けた魔法のランプの「炎の魔神」として、フェニックスとアクルックスを登場させたこと。
今から二千年も昔、砂漠の中にある都市の郊外だろうか、洞窟で倒れていた南十字星の使者フェニックスと神獣アクルックスは初代アラジンに救出され、その返礼として莫大な富を授けた。富裕になった初代アラジンは高い地位を得て、さらには皇帝から皇女を授かり、国王になった。しかし彼が本当に欲しかったのは永遠の生命であり、それを得るためにはフェニックスの心臓を騙し取らなければならないと企んでいた。フェニックスは初代アラジンを友と思っていたが、初代アラジンは裏切っていた。そして初代アラジンは永遠の生命を獲得できないまま死んだが、以来、代々のアラジン国王は野望を受け継ぎ、いよいよ当代アラジン国王は満月の今宵、千年に一度の南十字星が燃える夜に、野望の達成の好機を迎えた…と思っていたのだ。
南十字星が燃える夜に魔神の再来を祝う「魔神の祭」を挙行するのは、フェニックスと初代アラジンの間の約束だった。アラジンの宮殿を二千年振りに訪ねたフェニックスは、アラジンが約束を守ってくれていることを喜んだ。フェニックスはアラジンとの友情が二千年の歳月を経てもなお続いていると信じていたが、実際には、この「魔神の祭」こそは「炎の魔神」フェニックスを誘き寄せて騙し討つための罠だった。
赤井翼は初代アラジンにも当代アラジンにも失望し、あらためて人間の醜さ、愚かしさに呆れ果てたが、その直後、ジョーカーが「未来なんて、どうなるか分からねえから面白いんだし、永遠じゃねえから、生命ってのはオタカラなんだ!」という信念を宣言したのを聴いた。赤井翼は再びジョーカーを面白い人間であると思い、人間も必ずしも捨てたものではないのかもしれないと認識できた。
ところで。今回、ジョーカーがトリック発現の瞬間を待つカウントダウンを始めた際、「十、九、八・・・」と云ったところでハチが「はい!」と返事する場面があった。かつて第一期の第二話「芸術の都と百年金庫」で突然それが出てきて面白かったが、今回、不意を打つように久し振りに再現された。