赤塚不二夫名作選おそ松くん

小学館文庫『赤塚不二夫名作選 おそ松くん』には、「チビ太の金庫やぶり」のような名作が全十八編収録されていて、昭和期のモノクロームテレヴィアニメ「おそ松くん」でも人気の高い名作「いやみなイヤミなお客さん」、「チビ太の透明人間」、「イヤミのデザイナー」、「チビ太がペットだす」、「イヤミのおフランス軒」、「ほんとのことをいうな」の原作も含まれている。原作の題はそれぞれ「いじわるイヤミをおっぱらえ」、「10円だしてきえましょう」、「おフランスがえりのデザイナー」、「チビ太!デカパンの子どもになれ」、「イヤミのおフランス軒」、「エスパーニャンコをねらえ」。アニメ「「ほんとのことをいうな」の結末は凄まじく面白く、いかにも赤塚不二夫らしい展開ではあるが、意外にも原作「エスパーニャンコをねらえ」にはそれがない。
しかし誠に残念なことに、大昔に偶々読んで大いに楽しんだ「六つ子うるさいでていくよろし!」が収録されていない。やはり全集を買わなければならない。幸い、ロフトの特集には全二十二巻の文庫版「おそ松くん」全集があった。…と思って検索してみるに、どうやらこれは竹書房の文庫版で、完全版を謳いながらも完全版ではないらしい。著作権の複雑性に加え、藤子・F・不二雄大全集でさえ免れ得なかった「言葉狩」の影響で、過去の名作の完全集成には常に困難があるということか。