赤塚不二夫生誕八十周年おそ松くんオリジナル版DVD全六巻

二日前に届いた「赤塚不二夫生誕80周年 おそ松くん オリジナル版」DVD全六巻(十二枚組)を一通り見た。完全に視聴したわけではなく、インターネット上で視聴したことのある話については概ね飛ばして、視聴したことのない話を視聴するようにした。全六巻に収録されている全百四話の内、大半は今なおインターネット上で視聴できる。テレヴィで「おそ松さん」が放映されていた間はもっと多くの話が視聴できる状態になっていた(例えば、所謂「カラ松ロール」で知られる第三巻所収「いやみなイヤミなお客さん」も当時はインターネット上で視聴できていた)。
このDVDで面白いのは、各ディスク冒頭にのみオープニング主題歌を入れ、あとは二話毎にエンディング主題歌を入れていること。オープニング主題歌を伴う映像に表示される文字情報は毎週同じであるのに対し、エンディング主題歌を伴う映像に表示される文字情報は毎週(出演者の顔触れが違ってくるので)同じではないということを踏まえた措置だろう。この編集方針によって放送当時の雰囲気を辛うじて感じることができようか。
…と云いたいところだが、どうも違う。
インターネット上の情報(と云うか、ウィキペディア情報)には、主題歌にはオープニングもエンディングも同一曲が使用されていたこと(正確には、同一曲に基づきながら歌詞や歌手や編曲を変えて変化をもたせていたわけだが、ウィキペディアはそこまでは説明していない)、第二十六回目の放送を境に曲目が変更になったことが記されているが、実際、DVDでも、第四巻一枚目(通算七枚目)所収の、第二十六回放送分に相当する「おフランス式占い機」と「なんでもやるよ6回戦」の二話のあと以降、エンディングが藤田まこと歌唱による主題歌(の器楽曲ヴァージョン)に代わっている。
しかし厄介なことに、各ディスク冒頭のオープニング主題歌としては、それよりも前のDVDで既に藤田まことの歌が入っていたり、それよりもあとのDVDにも六つ子&松代&チビ太&イヤミの歌が入っていたりして、なかなか混乱している。
さらに厄介なことに、第六巻の二枚目(通算十二枚目)のディスクでは、放送順とは少々異なった順番に話を収録してある。インターネット上の情報によれば、テレヴィ放送の末期には、一回の放送を構成する二話の内一話を旧作の再放送に充てる場合が多かったらしい。ゆえに放送順に忠実にDVDを編集するなら、一話毎にエンディング主題歌を入れなければならない場合が頻発することになる。そうして煩雑になるのを避けるための措置として、一部の順番を変更したのだろうとは想像される。なるほど、新作と旧作で二話を構成することの多かった当時も、時折、新作だけで二話を構成し得た放送回はあったらしく、DVDでも、そこの組み合わせは確り再現してある。だから放送当時の二話構成を忠実に再現してある部分に関しては、エンディング主題歌を伴う映像に表示される文字情報を、当時そのままのものとして信頼できるわけだが、問題は、放送当時の二話構成とは異なった二話構成をなしてある部分で、その部分に関しては、エンディング主題歌を伴う映像に表示される文字情報をそのまま鵜呑みにはできないことになってしまう。実に厄介。
テレヴィアニメの歴史を考える上で極めて価値の高い貴重な映像を収録した極めて価値あるDVD全集ではあるが、作品毎の出演者や制作者を知るための文字情報を一部失わせるに等しい編集方針が取られた結果、史料としての価値が一部損なわれる結果となっている。あまりにも残念なことだと云わざるを得ない。
もちろん中身が面白いのは間違いない。インターネット上で視聴できない話が少なくないので、購入して視聴する価値は極めて大きい。今日の放送業界では不適切と認められるような表現をそのまま収録してある点は、史料として高く評価されるに値しよう。