テレヴィアニメ怪盗ジョーカー第四十五話

テレヴィアニメ「怪盗ジョーカー」第四期。
第四十五話(シーズン4第六話)「火の鳥と命の壷」。
今週もNTTひかりTVのWEB配信で視聴。原作は小学館てんとう虫コロコロコミックス『怪盗ジョーカー』第二十二巻に収録された「激突!天空忍合戦」だが、そこにドクター・ネオとプレジデントDを絡め、フェニックス=赤井翼の物語の一部となしたことで印象は大いに変化している。
アニメ版「火の鳥と命の壷」にしても原作「激突!天空忍合戦」にしても、ジョーカーとハチが甲賀百鬼丸共闘するところに面白さがある。原作では、全国各地の忍者たちが集合する年に一度の「大忍者祭」が話の舞台。この祭で一番の目玉は各地にある忍者の里から選び抜かれた精鋭たちが「服部半蔵の巻物」をめぐり技を競い合う大会「天空忍合戦」であり、百鬼丸に乞われてジョーカーとハチもそれに出場したことで共闘が実現した。対するアニメ版では、甲賀の里に伝来する卑弥呼の秘宝「命の壷」をジョーカーが狙っていたが、そこにドクター・ネオも参戦して強引に奪おうとした結果、敵の敵は味方であるという論理で自ずから共闘が実現した。
変わらなかった点は、原作における柳生ポン兵衛にしてもアニメ版におけるドクター・ネオにしても、敵は「科学忍法」と称し、高度な科学技術を忍術と偽っていたこと。それに対してジョーカーも忍術を真似て応戦した(アニメ版の第十二話「激突!闇の忍者軍団」でジョーカーは忍法を勉強していた)。最後の奇策を考え付いたのがハチである点も、原作とアニメ版に共通する。
全体として改変に違和感はなく、成功しているように思われるが、この改変で残念だったことも二つある。一つは、ハチの家族が全員集合してジョーカーの飛行船に遊びに来る段がなくなったこと。もう一つは、百鬼丸のライヴァルである伊賀千之助が登場しようがなかったこと。しかし以上二点を補って余りあるのは、ハチと百鬼丸との間の友情の深さが改めて描かれたこと、そしてそれにもかかわらずハチが今は忍者ではなく怪盗として、ジョーカーと一緒に生きてゆく意を決めていることも改めて明らかにされたことがある。
ハチが本来は忍者であり、忍者の里では皆に愛される存在であることは原作でも度々描かれてきたが、アニメ版ではそれらの話が悉く取り上げられてきた。その種の話には、忍者の里で生きてゆく方がハチにとっては本当は幸福だったのではないか?という可能性の示唆が潜在したり顕在したりして、特にそれが明確に顕在化した第二十三話「激突!魔道忍者の封印」では、ジョーカーはハチの幸福な境遇を想い、ハチをその幸福な境遇に帰してやるべきではないかと苦悩していた。そのときハチ自身がジョーカーの許に留まりたいと明確に宣言してジョーカーを安心させたが、今回は、忍者の里に帰って来ないか?という百鬼丸の誘いをハチが有難く思いながらも断ったことで、ハチの思いが再確認された。
甲賀の里に伝来する秘宝が「命の壷」であり、それがフェニックスから卑弥呼に授けられた特別な力の結晶であるということも含めて、今回の話は今後の展開(名作「不死鳥と魔弾の射手」がアニメ化されるのか否か)にも大きな意味を有するのではないかと期待されよう。
もう一つ、アニメ版で楽しかったのは、甲賀の里の祭でジョーカーが金魚掬いに没頭して楽しんでいたこと、赤井翼も屋台で売られている菓子を食べたり籤引に挑んだりして楽しんでいたこと。アニメ版「怪盗ジョーカー」の妙味は、ジョーカーやハチの日常生活を楽しく描いてみせる点にあり、そのような場面では作画も特に冴えているように見える。
惜しいのは、第三期以降、登場人物の「頭身を上げる」設定変更を断行した結果、バランスが損なわれたのか、時々絵が変になっていると見受けられること。『怪盗ジョーカー ミラクルファンBOOK』においてキャラクターデザイン&総作画監督しもがさ美穂が「頭身を少し上げてほしいとオーダーがあった」ことについて、「これ以上は成長させたくない」と述べているが(60頁)、やはり元に戻した方が良いのではなかろうか。