聲の形メイキングブック到着

京都アニメーション京アニショップ!から、『映画『聲の形』メイキングブック』が到着。早速開封して眺めてみたが、アニメ制作と芝居と音響制作それぞれの奥深さに圧倒されるしかない。
中でも凄いのは「原画ギャラリー」(68-72頁)。小学生時代、放課後の教室で石田将也と西宮硝子が大喧嘩をする場面の原画を掲載しているが、並んでいる絵を順に見てゆけば、そのままアニメーションとして感じ取ることができる程の緻密な動作の描き込み。必死に攻撃し、抵抗する二人の姿態と表情の細やかな表現をあらためて確認し得る。あまりにも素晴らしい。
山田尚子監督の絵コンテ(76-77頁)も驚くべき完成度の高さ。レイアウト作画監督も原画作画監督も原画チーフも揃って絵コンテを称賛しているが(59頁、61頁、91頁)、なるほど肯ける。山田尚子とともに絵コンテを手がけた一人が三好一郎(本名=木上益治/別名=多田文雄)であることも踏まえておくべきだろう。総作画監督の西屋太志が施した修正を見て「とても高い水準が求められているぞ!」と感じたという話(59頁)も、現場の気魄を伝える。西屋太志の「線の描き味」を生かすために「あえて線を途切れさせる」処理までも施していたという事実(81頁)も興味深い。確かに、あの映画を観ていて最も好ましく見えていた点の一つがそこだった。
実に見応えも読み応えもある書籍だが、気になるのは原作者の大今良時が「気になるところはあったのですが、数え切れないほどの良いシーンがありました」と述べていること(100頁)。その「気になるところ」はどこだったのだろうか。気になる。
主演声優の入野自由の経歴についての説明の中に、代表作として新海誠監督の映画「言の葉の庭」が挙げられているのは(27頁)、「聲の形」が新海誠監督の映画「君の名は。」とともにアニメ映画の新時代を築きつつあるかに見えることを想い起させる。