テレヴィアニメ怪盗ジョーカー第四十九話

テレヴィアニメ「怪盗ジョーカー」第四期。第四十九話(シーズン4第十話)「大海でなくした絆」。
今週もNTTひかりTVのWEB配信で視聴。
テレヴィアニメ独自の話であると思われ、ゆえに原作にはない話であると思われる。なにしろ今回の話の中心人物は、原作の小学館てんとう虫コロコロコミックス『怪盗ジョーカー』第二十四巻の表紙カヴァーの内側にある表紙のために描き下ろされた漫画を除けば、原作には一度も登場したことがないプレジデントD。その漫画の中でもジョーカーとハチからは「アニメオリジナルキャラなのにこっちに出てきていいの?」と文句を云われていた。
今まで(第三期第一話にあたる第二十七話以降)プレジデントDは常に財力で集めた怪盗や刺客を遣わしてジョーカーとスペードとクイーンを攻撃し続けてきたが、先週の第四十八話では遂に、自ら行動を開始。スカイ・ジョーカーを乗っ取り、クイーンを誘拐してジョーカーとスペードを誘き寄せ、一気に抹殺しようとした。
もともとプレジデントDは抹殺のみを望んでいて、自ら手を下すことまでは望んでいなかったはずだが、遂に、自ら手を下そうとしていた。度重なる失敗の末に、もはや自ら手を下さずにはいられなくなったのか?と思わせて、実はそうではなかったらしい。自ら手を下すように仕向けたのは配下の赤サソリであり、赤サソリに作戦を授けたのはドクター・ネオだったのが明らかだろう。
目的は、もはや用の済んだプレジデントDをジョーカー、スペード、クイーンと一緒に葬り去ることにあったろうと推察される。多分、ドクター・ネオはプレジデントDの莫大な財力を利用したかっただけであり、実際これまで散々利用し尽くした結果、自身の計画が間もなく成就することが見通されたので、利用の価値がなくなったと判断できたということではなかろうか。ともあれ、その辺の真相は次週にも明かされることだろう。
もっとも、プレジデントDが配下の赤サソリの意見をそのまま受け入れるとは意外であり、実のところ、自ら手を下すことには自身が敗北する危険もあったはずだが、それでもなお、ここで敢えて自ら手を下したいと決断するに足る理由がプレジデントDにはあったと見受ける。彼は自身の正体と幼時以来の思いを、ジョーカーとスペードに、否、ジャックとキングに明かしたかったのだ。そのために彼は、キングをジャックに奪われた忌まわしい夜の出来事(テレヴィアニメ第二十一話「大海を渡る絆」)をジャックとキングに想起させるべく、当時の舞台となった豪華客船によく似た船をわざわざ準備して、そこへ両名を誘き寄せた。
確かにキング=スペードはプレジデントDの正体に気付いていたが、残念なことに、ジャック=ジョーカーは説明を受けるまで気付かなかった。気付けなかった理由は、プレジデントDに往年のダンプ少年の面影がないから。しかし面白いことに、スペード=キングはダンプの面影をプレジデントDに見出していた。第四十六話「国際会議を狙え」において既にそうだった。
驚くべきことに、プレジデントD=ダンプがジョーカーとスペードに着目したのは、ミスター金有の豪華客船に招待された夜(テレヴィアニメ第三話「人魚と偽りの船」)のことだった。それはジョーカーとスペードが再会した夜でもあった。ミスター金有の蔵する秘宝「人魚の青水晶」をめぐって争いながら、ジョーカーとスペードは怪盗修業に明け暮れた幼時の出来事(「あの夏の麺ツユ」事件)についても云い争っていた。あの様子をプレジデントDは目撃していたのだ。
あのとき「人魚の青水晶」はジョーカーからスペードの手に渡った。だからスカイ・ジョーカーの宝物庫にはなく、スペードのツイン・サンダー・シャークに収蔵されていた。ダーク・アイの厚意でハチと一緒にそこへ転がり込んだホッシーが「人魚の青水晶」を発見し、食べてしまったのは、実に、必然だったと云うしかない。