新海誠監督作品=秒速5センチメートル

深夜、新海誠監督の代表作「連作短編アニメーション 秒速5センチメートル」をブルーレイディスク(インターナショナル版)で漸く鑑賞。二〇〇七年に劇場公開された作品。
傑作の誉れ高いが、なるほど、傑作に違いない。観終えたあと、圧倒されて暫し動けなかった程。明るい自室で、パソコン画面で観ただけであるのに。もし映画館の大画面、大音響で観ていたなら、どうなっていたろうか。
実のところ、小説版で読んでもコミカライズ版で読んでも第二話「コスモナウト」の澄田花苗にばかり感情移入してしまっていて、やはり映画を観てもそこは変わらなかった。遠野貴樹は、コミカライズ版では少々非道い男で、小説版では読者の心の痛みを突いてくるかのような人で、映画では悲しみに満ちていたから、多分、最初に映画を観て、のちに小説、さらにあとに漫画を読んだなら、彼の印象も違っていた気がする。
しかし登場人物に対する感情や思いがどうあろうとも、第一話「桜花抄」における岩舟行の絶望感のあとの温かな幸福感、第三話「秒速5センチメートル」における気の遠くなるような寂しさには惹き込まれざるを得なかった。これは小説でも漫画でもなく映画でこそ観なければならなかった。何といっても、第三話における主題歌の響きと、それに完全に伴われる映像の畳みかけるような動きには圧倒されるほかなかった。最新の傑作「君の名は。」における「スパークル」の強烈な美はその延長上にあったと判った。