君の名は。二十四回目/立花瀧の三つの瞬間

夜七時十分頃に外出し、歩いて衣山へ。シネマサンシャイン衣山に着いたのは八時の少し前。家で予約しておいたので自動発券機で発券し、ホット抹茶オレを買い、入場。
夜八時十五分から「君の名は。」を鑑賞(二十四回目)。約二週間振り。
一回目の鑑賞時から思っていたこと。立花瀧の顔が異様に美しく見える瞬間が三度ある。
一つ目は、立花瀧の身体に宿る宮水三葉が、イタリア料理店で奥寺ミキのスカートの傷を手当したあと、帰途の電車内で窓に映る自身の姿を見て、愛おしく感じたときの、その窓に映った立花瀧の姿。
世間には、二人がいつから互いに恋を抱くようになったのかを問う(=いつからであるのか分からないと文句を云う)人々があるようだが、立花瀧に対する宮水三葉の想いに関しては、このときに他ならないのは明確ではなかろうか。父にしても友にしても先輩にしても、さり気ない温かさを湛えた魅力ある人々に取り囲まれて自由に生きている立花瀧の人生と人物像を、半ば憧れながら恋しく感じたのだろう。奥寺ミキ立花瀧を「喧嘩っ早い」と形容したことも意味を持ったかもしれない。なにしろ宮水三葉は周囲からどんなことを云われても決して喧嘩しないように努めて、どこまでも行儀よく(千年前から糸守を支配してきた宮水家の次期当主に相応しく)生きているから。宮水三葉が喧嘩できる相手は、妹と、大親友のテッシー(勅使河原克彦)&さやちん(名取早耶香)だけ。身体の入れ替わりが発生して以降は最も熾烈な喧嘩を立花瀧との間に(ただし日記や落書を通じて)繰り広げることになるが、これこそは、立花瀧に対して最も心を許しているということ、換言すれば愛しているということを表している。
二つ目は、紅葉の糸守の山奥、宮水神社の御神体へ口噛み酒を奉納し終えて里へ帰ろうとする「カタハレ時」、宮水三葉の身体に宿る立花瀧が、夕陽に輝く糸守湖の絶景に感銘を受けていたのを見た宮水一葉が、「おや、三葉、あんた今、夢を見とるな?」と謎の問いかけを発した瞬間の、宮水一葉の眼前に現れていたかのように表された立花瀧の顔。
三つ目は、最後、須賀神社の石段の上の立花瀧が、宮水三葉が「わたしも」と云って涙を流したのを見て自身も涙を流したときの、あの顔。
今宵の上映室は劇場内の端にある小さな「箱」ではあったが、昼間にはその隣の上映室が充てられているようで、上映後には「君の名は。」のポスターが隣の上映室の入口へ移動していた。毎月一日は料金が安いという事情もあるにしても、今宵も上映室内には多くの客が入っていて、半年前に封切られた映画であるとは思えない程の賑わいがあった。