マギ第二十一巻

大高忍『マギ』第二十一巻。
マグノシュタット編は第二十巻で完結して第二十一巻からは「新章」。
マグノシュタットは七海連合とレーム帝国の支援を受けて「中立国」として再建された。レーム帝国を守護するのは、シェヘラザードの推挙によって再生して新しいマギになったティトス。病弱なティトスとマルガの健康を管理するのはマグノシュタットの医術の魔導士たちで、その中心人物はエリオハプト出身のスフィントス。アラジンにとっては信頼できる仲間たちで、もはやマグノシュタットにもレーム帝国にも心配はない。
こうして安心してアラジンとアリババとモルジアナはシンドリアへ帰還。そこには今までの旅でアリババと出会った人々も駆け付けていた。海賊「大聖母」のオルバと弟分たち。そしてレーム帝国シャンバル剣闘士養成所のトト。頼りなかったアリババにも強力な仲間たち(「眷属」)大勢が付いてきた。
やがて、シンドバッドと煌帝国の練紅炎との会談に先立ち、練紅炎は先ずは会談の場所への案内役をつとめるべきシンドリアの使者として、アラジンとアリババの来訪を要求してきた。その狙いがアラジンとアリババの確保にあることは明らかであるから、シンドバッドはアラジンの派遣を拒否したが、同時に、練紅炎が待ち受けている場所がバルバットであるから、シンドバッドはアリババを派遣したい考えであることを述べた。アリババがバルバットの現状に無関心ではないはずであると見込んだからであり、もちろんアリババも同じように考え、受諾した。
アラジンもアリババと一緒に行きたかったが、アリババに説得されてシンドリアに留まることにした。アリババは一人で向かおうとしたが、モルジアナも、トトも、オルバと弟分たちも、アリババを守るため同行した。
バルバットは変わり果てていた。世界を一つにすることを企てる煌帝国は、征服した国々を全て煌帝国の文化に同化させてきていた。当然、バルバットも本来の文化を失い、歴史も改竄され、煌帝国の一部に変えられていた。もともとの国民は労働者階級として働かされ、煌帝国からの移住者の支配下に置かれていたが、最低限の生活を保証されていることから大した反抗も起こらなかった。最低限の生活を支えるのは奴隷階級の存在だった。
共和制バルバットは実際には煌帝国の属国であり、その現状はアリババには何一つ納得できるものではなかった。そこでアリババは練紅炎にそのことを問いかけた。この理不尽な占領政策を考案したのは練紅炎の弟で、兄よりも温厚であるかに見えた練紅明だった。しかも練紅明は、世界を一つにするという練兄弟の構想には、アリババも同志であり得ると見ていた。
同じ頃、シンドリアの資料庫で魔法の研究を継続していたアラジンの前に、謎のマギ、ユナンが現れた。ユナンがアラジンに接近してきたことを知ってシンドバッドは大いに警戒したが、ユナンはシンドバッドの監視が及ばない空間を創出してその中でアラジンと語り合った。
ユナンはシンドバッドに対して警戒感を抱き始めていた。アラジンはシンドバッドの眩しさを愛し、「とても王様」であると感じながらも、なぜか危なさをも感じていたが、そもそもシンドバッドをダンジョン攻略へ導いてきたユナン自身も、シンドバッドがあまりにも「王の器」に近しいことを怖いと感じていた。そして今や「王の器」が何人も選ばれてしまっている中で、果たして「王の器」とは何であるのかを疑い始めていた。