氷菓コミカライズ版第九巻

米澤穂信原作/タスクオーナ漫画/西屋太志キャラクター原案『氷菓』コミカライズ版(角川コミックス・エース)。
第九巻。
神山高等学校文化祭(カンヤ祭)の三日目(最終日)、怪盗十文字の意表を突く行動に福部里志は己の非力を痛感して折木奉太郎に「期待」するしかなくなった中、折木奉太郎古典部を訪ねてきた姉から『夕べには骸に』を与えられ、千反田えるはその『夕べには骸に』の画風に大いに「気になる」話から、漫画研究会において事故に遭って退室の口実を得た伊原摩耶花千反田えるに請われて『夕べには骸に』の画風が総務委員会の文化祭ポスターの画風と同じであることを鑑定し、さらにはその作画者が生徒会長の陸山宗芳であることをも総務委員長から聞き出し得た話、千反田える伊原摩耶花からこの新たな情報を得た折木奉太郎福部里志を相手に情報を整理し直して推理を深める話、校内放送のレイディオ番組に出演した千反田えるは怪盗十文字の最後の標的と定められた古典部への支援を全校に向けて呼びかけ、その呼びかけを受けて大勢の生徒の参集した古典部において、折木奉太郎が店番に徹し、千反田える伊原摩耶花福部里志が狙われた校了原稿を守り、遠垣内将司や羽場智博も見守る中、予想外の大胆な事件が発生する話、怪盗十文字に古典部が敗れたあと、福部里志も敗北感を語って伊原摩耶花に聞かせる話を経て、千反田えるは入須冬実から妙な助言を与えたことの反省を告げられ、伊原摩耶花は漫画研究会の河内亜也子から『夕べには骸に』への思いを知らされて涙を流していた中、約五時間前に折木奉太郎が起こした行動が明かされる話まで。
盛大な文化祭の最終日の午後、怪盗十文字事件の華麗な結末を中心に、才能をめぐる千反田える伊原摩耶花福部里志それぞれの苦悩が描かれる最大の見所。折木奉太郎が真価を発揮する場面は次の第十巻に持ち越されている。テレヴィアニメ「氷菓」では、折木奉太郎による真相の解明のあとに伊原摩耶花と河内亜也子の場面を配して少年少女の苦悩をじっくり描き、抒情性に富んだ結末にしていたが、コミカライズ版で順番を変えているのは、単行本化の際の収まり具合をも考慮した結果だろうか。