旅行記二/上野恩賜公園/国立西洋美術館ジャポニスム展でモローのヘラクレスに再会/東京国立博物館平成館の運慶展と鶴屋吉信

 旅行記二。
 今日も休日ということで大いに寝ていたが、朝九時半頃にホテル食堂へ行き朝食。宿泊室内で寛いでいたところ清掃の人から何時に出て行くのかを聞かれたので、十一時に出ると予告して、準備を整え、外出。雨が止んでいたので徒歩で上野へ。上野恩賜公園へ行き、西郷南洲像を久し振りに眺め、駅前「世界文化遺産」とも云える国立西洋美術館に到着したのは十一時三十五分頃。
 見れば、券売所前に行列が生じていたので入ろうか否か思案したが、結局は行列に並び、「北斎ジャポニスム」展を鑑賞。しかし会場内に入るや、展示を順に観るための順番を待つ人々の行列が生じていたばかりか、当の行列に並ぼうとする人々の行列までも生じて長蛇の列を成していた。狭い会場内の混雑は凄まじく、まともに鑑賞できる状態ではなかった。それで入場したことをやや後悔しかけてはいたが、幸い、数年前にパナソニック汐留ミュージアムで鑑賞して感銘を受けたギュスターヴ・モローの「ヘラクレス」を久し振りに観ることができて、それだけで大満足。
 続けて常設展示場へ。二階では、アンゲリカ・カウフマン「パリスを戦場へ誘うヘクトル」や、新収蔵作品のブーグロー「音楽」が目を惹いた。ルノワールの「木かげ」は裸婦よりも美しい。ロダンの「地獄の門」関連の素描集も興味深い。そして一階へ。セガンティーニ「羊の剪毛」は、いつ観ても良い。新収蔵作品のラファエル・コラン「詩」と「楽」の二面一対も素晴らしい。実に鈴木春信風に繊細優美で、ジャポニスムの精華と云える。
 昼一時五十分頃に国立西洋美術館を出て、公園を歩けば、噴水のある池の上に謎の建造物。東京国立博物館へ行けば門前に既に大混雑が生じていたが、迷わず券売機で券を買い、入場。それにしても、今なお券売機で券を買うことに戸惑う人々が少なくないらしく、数秒で終わる作業に数分間を要する人々が混雑を悪化させていたようだった。
 門内にはタイ料理店の屋台が出ていたので、遅い昼食のためタイ風ヤキソバを買った。生憎、雨が降り出したのでベンチに腰掛けて傘を差してそれを食べた。
 平成館の玄関前には既に長蛇の列。しかし並んで順番を待った。待ち時間三十分間と云われてはいたが、三十分間も待った気はしなかった。入館後には先ずはコインロッカーへ荷物を預けたのち入場。運慶の作品は全て素晴らしかった。仏像における真の傑作を存分に観た。換言すれば、世の多くの仏像が傑作ではないこと、ゆえに造形そのものについて感動できなかったとしても当然であるのかもしれないことを痛感した。
 高山寺の子犬の小さな置物と図録を購入して夕方四時頃に会場を出て、平成館一階の講堂前に行けば、今回も鶴屋吉信が出店していたので、アイスクリームを買って休憩。器の中にはモナカの蓋があってその下にはバニラのアイスクリームと抹茶アイスクリームがあり、底には小豆が敷かれてあって素晴らしく美味だった。
 閉館時間の五時が迫ってきたので、大急ぎ本館へ。一階の近代美術室には河鍋暁斎の巨大な地獄図。寺崎広業の傑作「秋苑」も出ていた。明治の美少女と猫。横には森川曽文「群鹿」。鹿たちの群れ。何れも秋の絵か。二階の企画展示室では室町時代大和絵の特集。障屏画室には円山応挙の「波涛図」。酒井抱一の草花の画巻も美しかった。一階へ降りて、売店で「室町時代のやまと絵」図録を購入して東京国立博物館を出た。
 流石に疲弊したので、夕方五時四十分頃、上野駅の二階にある料理店に入り、野菜カレーで早めの夕食。洋食堂かと思って入店してみれば中華料理屋だったようで驚いたが、野菜カレー自体は普通の日本洋食のようだった。意外にも量が多く、食べ過ぎた感があったので、上野から蔵前まで歩いてホテルへ帰った。