家財道具一式を一気に搬出/Free_TYMの一場面を想起する夜

 未明から荷物の整理と可燃ゴミの整理に追われて既に疲れていた中、朝九時前には引越業者御一行が到着。早速、荷造に取り掛かったもらった。午後二時には廃棄物の業者が到着する由で、先ずは廃棄物周辺の荷造を進め、廃棄物から先に搬出。午後一時までには過半の作業が終わり、そこで休憩。
 雨の中、どこで昼食を摂ろうか思案した挙句、道後湯之町の商店街にある喫茶店でオムライスのカレーで昼食。二時を少し過ぎた頃から作業を再開。寝台をはじめ大型の廃棄物を全て搬出して、室内が一気に広くなった。途中、段ボール箱が足りなくなったようだが、追加分が到着し、ブルーレイディスク&DVDプレイヤーのような精密機器も梱包された。間もなく作業が終了する旨を告げられたので、急ぎ近くの銀行へ行き、代金のための現金を引き出してきた。戻って間もなく、搬出は完了。代金を支払い、領収書を受け取った。
 家財道具一式を搬出したあとの室内は、予想していた以上に虚しかった。壁が意外な程に汚れていたようで、それが虚しさを際立たせた。室内に残ったのは布団一式と、バスタオルと、カーテンと、清掃用具と、旅行の荷物のみ。先ずは床と壁面の清掃。疲れたので近所のコンヴィニエンス店で買物。電子レンジもないので今宵の分の弁当を店で温めてもらい、翌朝の朝食にはオニギリを三個。飲物はペットボトル焙茶を二本。
 この侘しい空間で不図思い出したのは映画「特別版 Free! -Take Your Marks-」(Free_TYM)の第一話の一場面。岩鳶町から東京へ七瀬遙の部屋探しに来た七瀬遙と橘真琴は、鴫野貴澄と一緒に何軒かの部屋を見て回り、鴫野貴澄と別れたあとも一軒の部屋を見て、そこに住みたいと漸く「運命の選択」をしたあと、疲れたので休憩をするため、一足先に部屋を決めていた橘真琴の、未だ家財道具一つもない部屋へ行って、コンヴィニエンス弁当を食べたあと休んでいた。さり気なくも印象深い場面だった。岩鳶町へ帰るための高速バスに乗車したのは夜であると考えれば、あくまでも休んだだけで、泊まったわけではなかったろう。しかるに今、吾が家からは家財道具一式が運び出され、布団と清掃用具と旅行の荷物しかない虚しい空間の中でコンヴィニエンス弁当を食べ、浴後には寝てしまおうとしている。これは予想以上に侘しかった。再び泊まるのは厳しいと感じた。