下北サンデーズ第七話

テレビ朝日系。木曜ドラマ「下北サンデーズ」。
原作:石田衣良下北サンデーズ」[隔月刊誌『papyrusパピルス)』(幻冬舎刊)連載中]。脚本:河原雅彦。主題歌:藤井フミヤ「下北以上 原宿未満」(ソニー・ミュージック・アソシエイテッド・レコーズ)。音楽:屋敷豪太。原案:石田衣良藤井フミヤ堤幸彦。原案協力:長坂信人(オフィスクレッシェンド)。企画協力:古賀誠一オスカープロモーション)。プロデューサー:桑田潔テレビ朝日)&市川竜次(オフィスクレッシェンド)。制作:テレビ朝日オフィスクレッシェンド。演出:木村ひさし。第七話。
下北の小劇団「下北サンデーズ」の面々は、雑誌やテレヴィに出たことを機に一気に著名人の集団と化した。それは前回までの間に描かれたが、今回はその必然の帰結として劇団が急速に結束力を失い、そもそもの存在の意義をさえ見失って崩壊の危機に面してゆく過程が鮮やかに描き出された。その流れは確かに必然だったに相違ないが、自然だったわけでもない。彼ら劇団員が注目されて人気を得たのは、もともとは里中ゆいか(上戸彩)人気に負うところ多大であるとはいえ、確かに彼ら本来の個性が認められたからに他ならなかった。しかるに同時に、そうして注目を集めた彼らの多くがそれぞれ活躍の場を与えられて一躍「売れっ子」と化したのは、芸能界を牛耳る大手の芸能事務所「オフィスフォルテッシモ」の豪腕チーフ・マネージャー、渋谷尚人(池田鉄洋)の力による不自然な売れ方でしかなかった。もっと自然な形で本来あり得たはずの変化は、恐るべき力の作用によって不自然な速度で進行した。そして変化の加速は変化の意味を変容させるのだ。
とはいえ人気というものが権力と財力のみによって容易に産出され得るものではないことを吾々はよく知っている。権力・財力によって人気を作り出す場合でも、総力を結集して「煽る」ことの影響力は小さくないにせよ「煽る」ための手がかりがあるのか?という問題も小さくはないだろう。佐藤新(藤ヶ谷太輔)が売れてジョー大杉(金児憲史)が売れなかったのは、自称「オシャレなメガネ男子」のサトシンこと佐藤新が「メガネ男子」として鑑賞され消費される対象であり得たような意味での「萌え」の要素が、「草刈正雄似」の古風な男前であるジョーには備わっていなかったからに相違ない。サトシンはサブカル系の雑誌の専属モデルに起用され、「胸キュン!メガネ男子ワールド」の宣伝文句で煽られ、大々的に売り出されたのだ。