マイボス・マイヒーロー第九話

日本テレビ系。土曜ドラママイ★ボス マイ★ヒーロー」。
脚本:大森美香。原案:「頭師父一體」。音楽:高見優。主題歌:TOKIO「宙船(そらふね)」(ユニバーサル・ミュージック)[作詞&作曲:中島みゆき]。企画協力:明石竜二(ミレニアム・ピクチャーズ)。制作協力:トータルメディアコミュニケーション[TMC]。協力プロデューサー:小泉守&下山潤(TMC)。プロデューサー:河野英裕山本由緒日本テレビ)&山内章弘&佐藤毅(東宝)。企画:東宝。演出:佐久間紀佳。第九話。
全十話のこの物語は次週で最終回を迎える。最後に最大の盛り上がりを創造するために主題を絞り込み、従って他の問題群には一応の決着を見ること。それが今週の話の役割だったと云えるだろう。榊真喜男(長瀬智也)に課せられた三つの問題群は、同時に全十話中の第九話に課せられた問題群でもあったろう。卒業試験という課題は、榊真喜男がセント・アグネス学園を確かに卒業できるはずであることを約束するために必要だった。組長選挙という課題は、榊真喜男が人物としての魅力を増して指導者としての迫力を高めたこと、しかも彼がヤクザであり続けるはずであること、従って堅気になるつもりが今のところないはずであることを設定するために必要だった。そしてヴァレンタインのチョコレイト獲得数の競争という課題は、榊真喜男が普通の堅気の高校生男子として、セント・アグネス学園3年A組の皆と無邪気に仲良く語り合い、笑い合える関係に達したことを証明するために必要だった。これら全ては先週までの八話を通して次第に解決し、或いは変容し、或いは深化してきたが、今週はそれらの現時点の状況を確かめた上で物語を推進してきた力をここで堰き止め、蓄積して次週の爆発に備えたのだ。その詩学的な真価は次週の最終話で明らかになるだろう。
この過程で榊美喜男(黄川田将也)の野心の意味が明らかにされた。「関東鋭牙会」組長の王座を彼が簒奪しようと企んだのは、敬愛する兄、榊真喜男に堅気の幸福を捧げたかったからだった。「桜ナントカ」こと桜小路順(手越祐也)と語り合い、梅村ひかり(新垣結衣)と愛し合うことのできる堅気の日常を、兄には続けて欲しかったのだ。丁度、榊真喜男が真鍋和弥(田中聖)に高校時代をやり直させたかったように。そして実際、榊真喜男も内心、ボスであるべきか、ヒーローの「マッキー」であるべきか、揺れ動いた。
榊真喜男が「マッキー」であり「マイ・ヒーロー」であることを最も強く信じているのは担任教諭の「てつ仮面」先生こと南百合子(香椎由宇)に他ならない。しかし同時に、南百合子先生は彼が「ボス」であることを最も受け容れそうもない人でもあるようだ。ここにドラマティクな力が発生するのだろう。榊喜一(市村正親)は、学園の「賢者」水島椿先生(もたいまさこ)が高校時代に愛した人だった。そして水島先生にとって今の榊真喜男を見るのは、昔日の榊喜一を見るかのようだった。さて、将来の水島先生は今の南百合子先生であるのだろうか、それとも梅村ひかりであるのだろうか。
ところで、榊真喜男の背後で平塚隆介(武田航平)はタオル地の青いハンカチを手にしていたようだ。ハンカチ王子なのか(…と思ったが、よく見たらあれはマフラーだった。先行する場面で彼は「キモロンゲ」こと諏訪部祐樹(広田雅裕)や瀬川保(田中泰宏)と一緒に教室に入ってきていた。マフラーの色は瀬川保が赤と黒、平塚隆介が青空のような青、キモロンゲが鮮やかな赤。以上、訂正)。また、関東鋭牙会ケーブルTVの番組「グッドモーニング鋭牙会」のニュースキャスターはZECT田所修一で馴染みの山口祥行だった。